2015年 03月 05日
ティム・バートン監督作 『ビッグ・アイズ』
60年代初頭にウォーホルを始めとしてアメリカンポップアート全盛の波に乗って、たいへん話題となった作品だそうですが、存じませんで。
暗い背景と時に影を落とした哀しげな目がデフォルメされて正面を向いている絵なんて部屋に飾りたいと思うんですねぇ・・・ちょっと個人的には理解できない類の絵です。
実話を元にされている作品ですが、日本ではどうしても2年前の事件を連想してしまいます。
あの時にも感じた、なぜゴーストライターとして嘘をつき続けることを甘受してしまったのか、という問題に関して。
マーガレット本人がエスプレッソも知らない働いた経験もなく内気な性格であったとか、時代が女性芸術家を認めなかったことが理由とされていますが、「時代」というのが最も納得しやすい理由でした。
彼女は最初は拒否しているし、途中でもなぜそんな嘘をつくのか抗議はしています。
それでも、ペテン師的巧みな速さで動き回る夫にみるみるうちに巻き込まれて、遂には「既に共犯者だ」と言われて反論もできなくなってしまう。
言われるままに作品を量産し、スーパーですれ違う人の目や鏡の中の自分の目まで「ビッグアイズ」に幻覚するほど疲弊してしまう。
いくら洗脳され脅迫されたとはいえ、自我の無さは釈然としませんでした。
それは、あの事件でも同じ。なぜあんないつかバレる嘘に加担したのか釈然としなかったのと同じ。
アイデアの枯渇が発端ではないのですし。
ほんとうに大切だったもの、ほんとうに失いたくなかったもののためになぜもっと早く動かなかったのだろう。
それにしても。
肖像画売りですでにこのタッチで描いてるし。画廊では妻が描いたと言ってるし。
バーで展示用にふたりで其々の絵の前でポーズとったポスター作ってるし。
なんでそれがマスコミに伝わらなかったのでしょう。
作品について尋ねられてしどろもどろになったり、アクリル絵の具も知らなかったり。
おかしなところは多々あったのに。
ああ、このあたりもあの事件と同じ(笑)
ウォルター役のクリストフ・ヴァルツの巧いですこと。
火の着いたマッチを母娘に向けて投げ、逃げ込んだアトリエの鍵穴へまで投げ込む、その不気味さ。
激昂した挙句に評論家へ向けてフォークを突き刺そうとする狂気。
口八丁に立ちまわる男の底の浅さ。哀れな逃げ口上。
マーガレット側の真意に釈然としない部分があるのもまた人間らしさなのでしょうが。
ここまで滑稽な強欲もまた人間らしい。
お見事、でした。
ちょっと面白い描写だなと思ったのが、
マーガレットが娘を連れて、最初の夫の元から車で逃げる場面と、ウォルターの元から車で逃げる場面。
両方とも娘は助手席ではなく左後部座席に座っているんですね。
で、後ろに右腕を伸ばして娘の手を取っている。
法廷内では、傍聴席の最前列に座る娘にやはり後ろ手に右腕を伸ばして手を握る。
勝訴して裁判所を出た時も娘は右斜め後ろに立っている。ここで手を取り合ったかは見逃しましたが。
ラジオ番組で真実を明かした後だけ、母娘はハグするんですね。
どうゆう演出意図かなと印象に残りました。
劇中に登場するジョーン・クロフォードのカメラへの振り向き方が傑作。
一瞬『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンかと(笑)
外へ出るといい感じに朧なお月さん。
3日より少し離れた木星でしょうか?
どん
ランチは趣味のいいジャズが流れる『喫茶リマ』さん。
昔ながらの喫茶店で落ち着きます。
カップがアラビアのアネモネじゃなかったわ・・・残念(笑)
ハムと野菜のミックスサンドをいただきました。
たぶんコンビニでも買ったことはなく。初めてではないかと。
美味しかったです。
ごちそうさまでした。
風の強い日で、沈丁花の香りも風に飛ばされてしまっていました。