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吉田恵輔監督作 『ヒメアノ~ル』

吉田恵輔監督作 『ヒメアノ~ル』_d0109373_21173387.jpgさすがにJ系さん主演とあって、場内盛況。

アイドルスマイルを振りまくタイプの方ではないので、クセのある役でも頑張ってる感じがない。
それは何度か出演した大河ドラマでも感じたことですが。
この方もう37歳なんですね。びっくり。小柄なこともあるし動きの軽快さ俊敏さはやはりダンスの賜物なんでしょうか。20代設定も違和感がない。
舞台でも評価されているだけあって表現力は確かで、シリアルキラーの異様さは隙なく表せていたんじゃないでしょうか。
犯行を直接的に見せず想像させるのもひとつの演出手法ではありますが、容赦ない暴力と異常性を直接見せて生易しい映像にさせなかったのは見事。

演出構成がユニークで、前半は「森田君」を絡めるだけで、「岡田君」の冴えないけれど平凡で平和な日常が映されて、だいぶ経って岡田とユカに、遂に「シリアルキラー森田」が忍び寄って来たという場面で初めて、テーマ曲とタイトル、キャストが表示される。クールですねぇ
それまで、岡田君を演じる濱田岳さんと安藤さんを演じるムロツヨシさんの軽妙なやりとりに笑わせて、そこから遂に一変するというのがゾクゾクさせました。
とにかく前半のふたりが可笑しくて可笑しくて。
いかにも怪しい安藤さんのユカへの不自然極まりない無理やりな誘いに、岡田君が横を向いて「だめ、だめ」と口だけ動かすとか。
ユカが実は岡田君が好きだと打ち明けた時に、「俺と同じ名前!?」とか。
自販機の陰に立っている安藤さんの斜めな態勢とか。
その安藤さんがショックで奇声を発するのに驚くユカを宥めようにも安藤さん叫び続けるんで「安藤さんウルサイ」とか。
もうね、この岡田君がシリアルキラーと対決してユカを守れるのかしらと心配になります。

ちょっと分からなかったのが、岡田君はなぜカフェで平然と森田に声を掛けられたのか。
ユカのストーカーらしい男が偶然同級生だったからといって、何年も会ってなかったのに突然声を掛けるのは躊躇われるという事だけでしたよね?
あれほど森田に対して後ろめたい事件があったのを、あの時は忘れていたの?
忘れられるかなぁ?一生着いて回る負い目でしょう?
岡田の性格上も、もう忘れているだろうと過信するほど無神経ではないと思うんですけど。

ラストは原作とは変えたそうですが、このラストのなんと痛切なことか。
岡田のことをまったく憶えていないと言った森田の車内での急変で記憶が甦った、岡田の回想。
出会いの時の初々しい会話。
日盛りの庭を望む部屋でのTVゲーム。
「おかーさーん 麦茶持って来てー」は、あの時の言葉なんだ

イジメという名で悪ふざけのように誤魔化される暴力の罪深さを、強烈に示した点では秀作だと感じました。

それにしてもニッポンのおまわりさん、手緩いなぁ



映画
by august22moon | 2016-07-24 23:00 | 映画 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


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