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庵野秀明・樋口真嗣監督作 『シン・ゴジラ』

実況アナが、「テニス競技」と紹介するのが新鮮です。
「男子体操・団体」で、内村せんせいの心底嬉しそうな笑顔ったら!ああ、よかった



庵野秀明・樋口真嗣監督作 『シン・ゴジラ』_d0109373_18531212.jpgさてさて。わたくし史上2度目のゴジラです。本家日本のゴジラは初めて。
かなり高評価のようで、夏休み真っ盛りなこともあり、老若男女で盛況でした。トイレなのか途中で出入りされる方が多いのが、こうゆう夏休み映画ならではです。

日本のゴジラシリーズは見てないうえに、エヴァに至っては全シリーズ通しても30分も見ていないので、今作に散見されるらしいエヴァらしさも、過去作品へのオマージュも分かりません。
ですから、庵野作品としての面白さが分かったとはいえませんが、前半の官邸の動向にいかにもというリアリティーは感じられ、怪獣をメタファーとして、日本の危機管理体制を現実感あるものに成立させていて見応えがありました。

ゴジラが初めて人類の前に出現したところから始まる本作。「第二形態」が、どこか昔の特撮怪獣を思わせるよう。材質が判んないし、なにも見えてないような目もちょっとキモチワルイ。
ハリウッド版ゴジラは、頭が小さくて口もあの咆哮に対して小さかったですが、今度は口がでけい(笑)
路上からの人間目線で屋根を掠める尻尾とか、都内を進んでいくのを捉えた引きの映像などは迫力がありました。

「有害」な異生物「駆除」に自衛隊を出動させるまでの、まどろっこしい会議と閣議。
いったい何の仕事してるのか不明な長い肩書きも容赦なく出すのが親切なんだか惑わせてんだか。
「文部科学省研究振興局基礎研究振興課長」も、え?何課?とりあえず文科省ってのは判ったぞ、て具合。
(『突入せよ!あさま山荘』で、佐々氏の長ったらしい肩書の呼称問題を思い出しました。)
有識者として呼ばれた学者の「時間の無駄」さ加減(この3人のキャスティングが傑作)や、演者の顔の上に条文が重ねて映し出されるのもシニカル。スクリーン全面に出て読ませない文字量。
対策本部の命名も、スクリーンの端から端までの長さ。
つまりは、イザという時がんじがらめなわけですね。

対策本部の面々が様々に調査検討し、牧教授の残したヒントを推理していくのも緊迫感がありました。
(間准教授の広げた手書きの構想図が恐いぃ)
つまりは、個で突破するのではなく、組織的に打開していくんですね。
作戦名長いんで「八塩折」との命名は、ファンサービスみたい。

ぎりぎりのところで‘自衛’によって一時決着させ、「アメリカの属国になる」ことを回避できたと安堵するのも、これが今の日本なんでしょうね。
震災や原発問題での実際の官邸対応を想像させるポリティカルサスペンスでした。
登場場面が少ない役にも名脇役と評される俳優陣を配しているので、短い場面の中にも重厚感と密度がありました。

自衛隊の攻撃にも見応えがありました。
スクリーン上部からアパッチ・ロングボウが1機入り込んでくるショット、全機が同時に向きを替えるショットが素晴らしい。誤射もなく全弾命中。東富士からのMLRS発射。(映像は総火演ですね)
自衛隊幹部会議室のテーブルの小ささ光量の低さが実戦的!

作戦中にドジ踏んだり先走って足を引っ張る輩は皆無。全員がプロフェッショナルである爽快感がありました。
日本が本土決戦でどれだけの戦闘能力があるのかだけを見せて、豪快。

忘れてましたが、ゴジラはモーションキャプチャーだったんですよね。確かに独特の「運び」が出たところは妖しの生命感が見えて面白い。
日和見な里見総理臨時代理がラーメン好きというのは「さきがけ」の武村氏を思い出させました。ゴジラの進路が解明した時の貝原・・・じゃない高橋一生さんのリアクションはあれでいいのか?(笑)

アメリカ特使の日系人女性が、英語訛が無く英単語だけ英語発音で喋る唐突感も手を広げるジェスチャーも、エリートに見せる芝居が悉く漫画チックに陥ってしまい、現実味に水を差していました。
防衛大臣はメイクまで似せていたのに。
もう少し大人の女優さんっていないのかな
俳優さんたち皆さん早口で喋るのですが、滑舌が心許ない俳優さんもいて、聞きとれない単語がありました。

当初は事態がまだ解らずのんきに構えていたり、被害に合わない地域にあっさり日常が戻っているさまは、きっとそうなるんだろうと思わせます。
逃げ遅れるひと。瓦礫の山。作業する消防隊員と自衛隊員。避難所で粛々と過ごす人々。除染問題。
実際に日本人が経験してきた事象はくまなく描かれていました。
主要人物の背景や被害市民に焦点を当てて描かず、端的でありながら深く表現したのもよかった。
逃げ遅れた老人を背負った人も、走れないからと避難を拒否するのをようやく説得したんだろうなぁと想像させました。

「私は好きにした。君らも好きにしろ。」
『春と修羅』と共に残した牧教授の遺言は、庵野監督の5年間の思いが込められているようです。

・・・最後のあれ、リトルのように見えましたけど




映画
by august22moon | 2016-08-09 23:00 | 映画 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
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