2016年 10月 22日
ロバート・ゼメキス監督作 『ザ・ウォーク』 wowow放映
あの高さを想像する集中力を必要としました。
スクリーンなら、自然と足の裏ムズムズしちゃったことでしょうに。
もっと高い所をと、可能性を追求していくさなかに出会ってしまったのが、建設途中のワールドトレードセンターなわけですね。
この作品の後に放映された、ドキュメンタリーの『マン・オン・ワイヤー』で見たフィリップ・プティ氏本人は、インタビューもハイテンションだったせいか、ゲリラ的にパフォーマンスするのも、人々を驚かせることが焦点のように見えてしまって・・・
しかし、ジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じると、彼の真意が理解できました。
師匠との関係がじっくり描かれていたこともあって、ワイヤーの上で恭しく礼をするのも
寝そべった時に目が合ったカモメが、鳥の領域を侵していると言っているように感じたのも
いかにも芸術家の感性。
アニーが、ビルに「命を吹き込んだ」と言った言葉にも、プティ氏が訴えたいであろう芸術性を気付かせました。
合い間合い間で、自由の女神のトーチに立ったレヴィットの解説を挟んでいるんですが、最後に、WTC展望台のチケットを贈られた話が紹介されます。
警察に連行されはしたけれど、作業員たちは拍手で見送ったし、こんなチケットをプレゼントするほどにおおらかな時代だったんですね。
実際に示されたチケットには手書きで「permanent」。
「永遠に入場できる」と自慢気な笑顔で語った直後に表情を消して視線を下げ、スクリーンから外れる。
アッパーニューヨークベイを挟んで見えるWTC。
永遠と言われても彼にとっての「聖域」は既に失われてしまった。
無謀な挑戦をしつづける男の物語というよりも、まるでその巨大な建築物の消滅を惜しんでいる映画であったようです。