人気ブログランキング | 話題のタグを見る
NEW POST

クリストファー・ノーラン監督作『ダンケルク』

クリストファー・ノーラン監督作『ダンケルク』_d0109373_1852180.jpgようやく。久し振りに映画館へ行けました~

音がとにかくでかい。
ってこれ、以前にも他の作品で申しましたね
オバサン、爆音に慣れるまで時間かかります。
冒頭の、目に見えぬドイツ軍の発砲する重火器の音から、戦闘機の飛行音まで爆音。
4DXでもないのにシートが振動しましたので、戦場の臨場感はたっぷり味わえました。
多くの兵士が桟橋や防波堤に密集している画は、緊張感のあるものでした。
いや、緊張感といより絶望感。
気付いたらいつからか、アナログ時計のカチカチという音がずっと鳴っているんですね。
トミーとアレックスが列車の座席に座るまで、ずっとカウントダウンされているのも緊迫感を途切れさせない効果がありました。

ようやく乗り込めた船も爆撃され、打ち上げられた「助け舟」である商船は潜んだドイツ軍に銃撃される。
隠れるところもない砂浜では、メッサーシュミットから爆撃され放題。
「空軍はなにをしているんだ!」と叫ぶ兵士がいますが、いつ攻撃されるか分からない状況にハラハラ。
しかも、ようやく乗り込んだ船も攻撃され、海に投げ出され、船から流れ出た重油の上にメッサーシュミットが墜落して火の海。
こんな状況でほんとうに何十万人も救出できたのかと訝しくなるほど、一難去ってまた一難。

構成が面白くて、陸海空で経過時間がそれぞれ違う。
救出を待つ砂浜では1週間。救出に向かう民間船は1日。迫るドイツ空軍を迎え撃つ空軍は1時間。
砂浜へ英国軍が集まったそのころイギリス国内や空軍はこんな様子・・・なんて気を揉ませることはないわけです。

救出を待つ間の緊迫感も面白いのですが、救出を待つトミー、ギブソンたちや、救出に向かうムーンストーン号船長のドーソンたちの描き方もとても見応えのあるドラマでした。
ドーソンは救援を求められた時から英国海軍の一員となったかのような責任と威厳があり、共に戦っていました。

トミーはダンケルクの砂浜のはずれで死んだ兵士の軍服や靴を明らかに盗んで着込んでいる男を見つけても咎めもせず、一緒に埋めるのを手伝うんですが、イギリス兵ではないと直感していると感じました。
薄々感づいていながらなにも聞かないのも、その前にドイツ軍を食い止めているフランス兵に助けられたことがあったからじゃないかとね、思いました。
怪我人が優先的に乗船できるのを見たこの男がすぐさま、運ぶ兵士も撃たれて砂浜に置かれたままの怪我人の担架を運ぼうとするのを察して一緒に運び始めるし。
ようやく乗り込めても怪我人以外は下船するように言われ仕方なく降りようとすると、「ギブソン」が桟橋の下に隠れているのを見て追っていく。そこでもまったく声をかけない。
そこがまた、若い兵士たちの緊迫感を感じさせました。
沈没した救出船から助けられた若い兵士アレックス役で、ワンダイのハリー・スタイルズが出ているんですが、トミー役のフィン・ホワイトヘッドと共に、40年代のイギリス青年らしい風貌にしていて違和感はまったくありませんでした。

帰還した場面もとてもよかったです。
民間船が沖合に現れた時は、正直それほど感動的ではないんですが、イギリスに無事着いてからの場面のほうが印象的でした。
男性が「よく戻った」と帰還兵たちに毛布を渡すのをアレックスは、負けたのにと苛立ちを露わにするんですが、トミーにはこの男性は目が不自由なことが分かってしかも生きていればそれで充分と言われているのに、それすら黙っている。
生きてさえいれば希望はあるのかもしれないけれど、這う這うの体で逃げてきた事実は消えないこれは敗戦なのだ。
そこがね、トミー自身も今ある状況を整理できていない気がしました。
多くの民間船の協力があったことや勇気ある撤退と称える新聞記事をアレックスに読み聞かせた後の表情は、複雑な心境を滲ませて秀逸でした。

トム・ハーディーがスピットファイアを駆って大活躍なんですが、ラストが泣かせました。
燃料が無くなるギリギリまでドイツ軍機を撃ち落とし、プロペラも止まっているのにパラシュート脱出せずなんとか車輪を下ろして敵地の近い砂浜に着陸し、戦闘機を燃やす。
ドイツ軍から守ったわけですね、相棒を。
最後まで戦い抜いてくれた相棒を慈しむように見つめ続ける背中。火葬のような炎。
抵抗もせずドイツ軍に捕らえられる潔さ。
操縦席の中がほとんどとはいえ、見せ場の多い役どころでした。


波打ち際には波の花が浮いていましたが、寒かったんでしょうねぇ



映画
by august22moon | 2017-09-26 23:10 | 映画 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31