2017年 12月 09日
ジェームズ・ポンソルト監督作 『ザ・サークル』
SF小説はじめネット社会の愚かさ恐ろしさを描く作品は多々あります。今作もそれら同様デフォルメされた仮想社会。
父は難病、母はその看護に追われている。なんとかもっと収入のいい仕事で両親を楽にさせたいと願う女性の気持ちはもちろん理解できるんです。
運よく大企業に就職できて、スキルアップもできて、父の病のケアまでしてくれるなんて、メイにしたら信頼してしまうのも道理。
しかし、面接を受けさせてくれた友人の、社内を案内しながらの慌ただしさったら。
始終スマホにメールが入る。返信しながら捲し立てる。世界中を飛び回っているトップ社員なら仕方ないのでしょうけど。面接官も捲し立てる。初日の業務説明も早口。
SNSの評価が社内の評価って、どうゆう意味?
社内中がやたらとハイテンション。福利厚生なんて充実の度を超えてる。
社員全員が疾走感に酔っている。
確かに地上最先端をいってる企業にいれば有頂天にもなるでしょう。
‘あなたにはその価値があるから' みたいな?
もしかしたらこんなハイテンションパラダイスなカイシャが、この世のどこかに存在するかもしれませんけれど。
プライベートまでコントロールされて、まるで宗教。
エマ・ワトソンは、その知的さとともに無垢な雰囲気が、主人公メイに巧く嵌っていました。
知性もあるのに純真すぎて、そこが危うい。
どう考えても24時間プライバシーを晒すなんて、普通の人間なら耐えられることじゃない。
巨大企業の頂点に立てたと思ってしまったか。
その後、失うものの大きさに気付いても、友人のように辞めることもせず、よい部分があるのだと復帰するというのが面白く恐ろしいところですね。
トム・ハンクスは、大衆を虜にするカリスマ性とその裏の強かさが流石の巧さでした。
メイに逆襲された時の、少しも狼狽えず冷笑するところもお見事でした。
俳優陣の巧さで、人間ドラマとしては現実味が出ました。