清水潔著 『殺人犯はそこにいる』 新潮文庫版

d0109373_22463721.jpg半年以上ぶりの感想文です。
「文庫X」が話題になった時、これほどに書店員さんがなんとか興味をもってほしいと手を尽くす本はどんな作品なのか興味が湧き、書名を調べてみたのでした。
発売当初にも興味があったので読み始め、DNA鑑定問題あたりで例によって他の本を読み始めてしまい、途中になっていたことを忘れていました。
・・・と永い言い訳。
79年から90年までの間に起きた「北関東連続幼女誘拐殺人事件」と96年に起きた幼女失踪事件の捜査を追った作品。
小説家が書くものと違い、実際に取材にあたったジャーナリスト本人の著作ですから、冷静な視点で事件の真相を探るのではなく、杜撰な捜査や被害者遺族への理不尽な対応まで、清水氏の怒りや執念や無念がストレートに伝わってきます。

これまでの冤罪事件でも起こっていた、いつか自分の身にも起こるのではないかと想像してしまう恐怖が、この事件には詰まっています。

特に恐ろしいのが、死刑が執行された後になって冤罪が判明した事件があるということ。
真犯人はどこかでのうのうと生きている。守ってくれるはずの国に殺される。
これ以上の絶望はない。
たとえ冤罪と分かって無罪を勝ち取ったとしても、奪われた時間は取り戻せない。
屈辱も消えない。無実なのに偏見すら残る。

初動捜査の間違いを糾そうとする者が出てこない限り
いや、本書を読んだかぎりでは、そんな希望さえ僅かにも持てそうもない。
清水氏に続くジャーナリストたちの執念だけが頼りかもしれません。


本・読書
by august22moon | 2018-03-29 23:00 | 読書 | Comments(0)