2018年 04月 12日
スティーブン・スピルバーグ監督作『ペンタゴンペーパーズ/最高機密文書』
緊迫のストーリーを端的で劇的だけれど抑制の効いた映像表現で、見る側の情動を掻き立てる作品でした。
やはりメリル・ストリープは巧くて。この女性がこの時代にいかに闘ってきたかがよく理解できました。
経験もない中で必死に学び、会議室に誰も資料を持って来ていないのを見るや下げてしまったところで、別の取締役に自分は資料がないとと助け船を出されて安心して戻したり、いざとなると自信のなさから一瞬言い淀むとすぐさま男性取締役に発言を奪われて(この時のストリープの複雑な表情が素晴らしい。この一場面だけでもオスカーノミネートに値する)、お飾りのようになってしまう。そんな状況下でも一歩一歩新聞社社主として自信をつけていくさまが、まぁ巧いですこと。
質問されて予習メモ見ていた人物が、「ここは父の会社でも、夫の会社でもない。私の会社よ。じゃ、私は寝ます。」と一歩一歩迫っての堂々たる振る舞い。
彼女は彼女に出来ることを精一杯やってきた。その成果。
優雅なパーティードレスが鎧となって、女王陛下の貫禄すら感じさせました。
その背後で彼女の成長と変化に頼もしく感じているブラッドリー主幹の表情もいい。
そして受話器を掴んでの、「run!」
機密文書を持ち出すエルズバーグが警備員のいる出口で一旦躊躇し立ち止まる。
タイムスのスクープに慌てて街頭のキヨスクで新聞を開くとビル風に煽られて次々と新聞紙が空中に舞い上がる。
(水たまりもお構いなしに道路に新聞の束を投げ落とすって。どーゆーことー)
裁判所を出るキャサリンを見送る女性たちの声なき声援。それを誇らしげに笑みで受け止めるキャサリン。
ニクソンが録音していた肉声を使ってのラスト。
ポスト紙を排斥すると豪語するその後で、懐中電灯を持った警備員がビルの薄暗い通路を進む場面に切り替わる。
雄弁な映像に唸らされます。
(ビルの窓には侵入者の懐中電灯の光が揺れる。それを隣のビルからトム・ハンクスが見ていて通報・・・なわけありません)
ブラッドリー役はジェイソン・ロバーズが強烈で、敵を内に隠して闘っていて鋭いナイフのようなブラッドリーだったのに比べ、包容力を感じました。
部下と相対する場面ばかりだったロバーズに比べ、家庭人としてや経営者との関係も描かれているからでしょうか。
話しの最中に娘がレモネード売りの看板を持って通り抜けるところなんて、スピルバーグ作品は家族のコミカルな描き方が楽しい。
当時の活版印刷のもようも映し出されますが、気の遠くなるような作業。
ただただ感嘆。
あ、キッチン やっぱり黄色
この日は、夜も更けるにつれて雨が強くなり、やがて台風のような、傘もさせない暴風雨になりました。
ずぶ濡れで帰宅すると、雨も風もぴたりと止むというね。んもー