リドリー・スコット監督作『ゲティ家の身代金』

d0109373_20321078.jpgクリストファー・プラマーが圧巻でした。
これは彼しかない役柄。ただそこに居るだけで冷酷な大富豪。
屋敷から歩み出て来て記者たちに不敵な笑みで「nothing」と、孫の生命を脅かす事態を一蹴。
ミッシェル・ウィリアムス演じるアビゲイルが闘う「巨大な敵」に相応しい存在感。
最初っから彼にしとけばバタバタしなかったのにねぇ

実際に起きた誘拐事件ですが、被害に遭った青年や母親がいかに犯人グループと闘ったではなく、いちばん期待していた孫が生命の危険に遭っても頑として身代金の要求を呑まなかった富豪老人を追っています。
身代金を払えば解決へ進展すると信じる母親に対して、あまりに冷酷無比な態度なわけです。
警察の捜査の進捗具合が出てこないので、ゲティ氏がいつ心変わりしてくれるのかばかりに視点が行く展開です。
まるっきり事件を無視しているわけではなく元CIAに交渉もさせるんですが、身代金を値切ることしかできない。ようやく動き始めはしても、貸付なら節税になるという案には感心してしまいますわ。しかしこの案にも落とし穴があったというところが実に面白い。
犯罪者とは交渉しないのが信条なんでしょうが。ブレない。
ここで警察がもっと頼りになれば、アビゲイルも苦しまなくて済むんですが。
あの、無線。なんたるドジ。


ラストで胸像を見つめるミッシェル・ウィリアムスの、憎しみの表情が秀逸でした。
莫大な遺産を受け継げたとしても、心の中には、一生残る傷を我が子に負わせた恨みが消えないのだろうな、と。
憎むべきは誘拐犯ではなく、孫の命すら軽んじた老人であったのに、その亡霊と生きなくてはならない。
警報の鳴り響く中、ひとり寂しく絵画を抱いてこと切れる孤独で哀れな老人ではあったわけですが。
数ある美術品の中で最期を共にするのに選んだのが聖母子像であるのは、贖罪のつもりであったのか、単に、遂に手に入れた貴重な作品であったからだけなのか

ゲティ氏の寝室のカット。まるで絵画のようでした。


映画
by august22moon | 2018-06-02 23:12 | 映画 | Comments(0)

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