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上田慎一郎監督作 『カメラを止めるな!』

上田慎一郎監督作 『カメラを止めるな!』_d0109373_23152871.jpg9月に入ってからのレイトショーでしたが、結構お客さんがいて驚きました。

こうゆう作品は見ないだろうしその前に地元には来ないだろうと思っていたものですから、ストーリーを調べてみたんです。
ところが多くの方が、面白いから是非見てほしいと詳細の記述を避けて紹介されている。
それでも拡大公開され始めて少しづつネタバレで書き込まれる方も出て来ました。
8月最終週位かな?なんと地元にもやって来たではありませんか。
レトロでB級感溢れるポスター1枚で、これはないわ~と見る気も起きなかったのに。
見に行ってしまいました。
バラエティー番組の再現ドラマにゲスト出演しているのを偶然見まして、ああこうゆう方ならだいじょぶかな?と思いまして。

ストーリーを知って見ても、とても面白かったです。

俳優さんたちはお一人を除いて無名の方たちばかり。「作品」自体がいかにもインディーズの低予算作品。
なんだか若い方々に人気の小劇団の芝居を見ている感覚。
メイク担当役のしゅはまさんは巧いなと思うくらい。

第二部のこの「作品」を製作する切っ掛けの場面になると、だいぶ雰囲気が落ち着きまして。
先ず、監督役の方の芝居がとてもよかったです。
自分で「質はそこそこ」なんて自嘲する。実績がないからプロデューサーにも平身低頭。
アイドルには「よろしくで~す」と、見下される始末。
ベテラン俳優の身の上話に、きちんと相手をするところなどは、人の好さが表れていました。

そんな父親を娘も軽蔑しているので、父親の作った再現ドラマの放送最中にチャンネル替えちゃう。
奥さん役のしゅはまさんは、そんな冴えない夫を叱咤するでもなく見守っている表情がとても落ち着いていました。
この父娘関係が、軸となっているんですが、その流れがとても良かったです。
「カメラは止めない!」の真の意味は、監督の狂気の演技だけではないことが、全編見終わった後でようやく観客に響いてくる。

そのほかの登場人物の造形もとてもしっかり出来ていて、それがお話に厚みをもたらして、単なる若い人が作るコメディに貶めていませんでした。
カメラマンと助手の関係も。その助手のコの転びっぷりも。
(うっわ~あんな草むらに~とこの作品中1番の恐怖シーンでした)
出演者全員の演技が安定していました。

音楽の使い方にとてもセンスが感じられて、特にクライマックスで、いよいよ組体操のピラミッドが出来上がるってとこでアップテンポの曲が流れ、女性スタッフが崩れ落ちると監督がストップを出し、同時に曲も止まり、芝居がまた繰り返され、曲がまた流れる一連の繰り返しは場内に笑いが起こりました。
ああ、それでこの芝居を繰り返してたのね。

私が思わず吹き出しちゃったのは、お父さんを助けるため撮影に急遽参加した娘が、小道具の生首を監督助手に「投げて!」と言われ投げ渡すんですが、それが強すぎて監督助手が取り損ねたとこ、です。一瞬なんですけどね。一瞬というのがいい。

様々な伏線が回収される第三部ですが、ベテラン俳優の真似して台本の表紙裏に貼った子供の頃の娘を肩車した写真は秀逸でした。
その1枚で、父の想いを知るというのも。
そしてそれがヒントになって最大のピンチを救うのも。
同じ構図になったねと晴れやかな笑顔で差し出すのも。
それを受けての父の照れ笑いも。
その辺りのテンポが速いとこが最高で。しっとりやって、感動作っぽくまとめたら、反ってシラケちゃうとこでした。

生放送をなんとかやり抜こうとスタッフたちが奔走する映画といえば『ラジオの時間』。
主演女優が役の不満から本番中にストーリーを壊していくのにスタッフが翻弄されますが、こちらは個人的事情がよりによって本番中に発生して撮影に支障が出始める。
悪意あるものではないから、他のスタッフがカバーするためひたすら頑張る。
基本的ストーリーは死守している。
そのひたむきな仕事ぶり。そのプロ意識の高さが、感動させるのかもしれないですね。

見てほしいと薦めたくなる気持ちが分かる、面白い経験でした。


映画
by august22moon | 2018-09-12 23:00 | 映画 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
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