人気ブログランキング | 話題のタグを見る
NEW POST

ヨルゴス・ランティモス監督作 『女王陛下のお気に入り』

ヨルゴス・ランティモス監督作 『女王陛下のお気に入り』_d0109373_23162048.jpg 『ロブスター』も『聖なる鹿殺し』も見てないけれどだいじょぶかしらと、迷ったのですが。
アン女王役で主演女優賞にノミネートされたというオリヴィア・コールマンの演技が見たくて行ってみました。
持病に苦しみ疲弊していき、視力も落ち、ストレス発散に過食。召使たちは理不尽にヒステリーの標的とされる。
一目で、腹心にいいように操られて威厳も失われているのが分かる顔。
しかしラストは、逃れられない君主の孤独と女性としての悲運と自分の情けなさを初めて正面から受け止め、そこから歩いていくしかない覚悟が感じられる見事な表情でした。

映像も面白かったです。
宮殿の寝室や接見室などは、美術品が飾られ、絵画が掛けられ、絨毯のような細かい柄の織物が張り巡らされて、重厚というか圧迫感がある。
しかも、超広角レンズやローアングルで部屋全体を映すので、空間の余白が感じられない。
国内経済やフランスとの戦いを話し合っているにも関わらず、閉塞感が出て、女王が外に目を向けられてないのが強調されました。

女王の全てを掌握した幼馴染のサラから、サラを頼ってきた従妹のアビゲイルへと、アンの「お気に入り」が移っていくんですが、政治的にも影の実力者であったサラとは反対に、女王の弱点を突いて近づいていったアビゲイル。彼女は没落貴族であるために貴族に返り咲きたい野望が先行して、結局のところ女王の哀しみに真に寄り添っていたのではなかったことが最後に露呈してしまう。
浮かれて油断が出ちゃったねぇ

今度は自分が排除される番になったのを肌身に感じているエマ・ストーンの虚ろな横顔に、女王陛下の「お気に入り」であり続けたウサギたちが数を増やして被さるラストは、哀れな喜劇の幕切れで、ありました。


映画

by august22moon | 2019-02-24 23:00 | 映画 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31