2019年 03月 18日
ケネスロナーガン『マンチェスター・バイ・ザ・シー』wowow放映
傷ついた者同士がどんなふうに生きていかなくてはならないか。
100人いれば100の涙があり傷がある。悲劇はそれぞれに違って、同じものは無いことを示していました。
主人公のリーは、自分の不注意で幼い子供たちを失っているのに、罪にならず償うこともできない。
警官の銃を奪って自殺しようとしても弾が込められていなかったため、自らを裁くこともできなかった。
この場面が一番印象に残りました。
登場人物たちは最後まで誰一人、過去から立ち直れてなかったし、解決する方法など無いと分かっている。
克服して立ち直って新しい明日へ向かって、なんてうそ寒い展開ではなかった。
乗り越えられないと認める辛さが突き刺さりました。
物語の中で、回想シーンが何度か挿入されるのですが、それが唐突に始まるので、一瞬戸惑うのですが。過去の思い出って、そうゆうふうに突然甦ってきてしまうものですから、そこはとても現実的で、リーの逃れようにも逃れられない苦しさを感じました。
甥のパトリックと葬儀の帰り途に、ゆっくり歩きながら、落ちていた野球ボールで遊んだり、君が泊まる部屋を用意しておくよと話したり。船で並んで釣りをしながらちょっと微笑みあったり。
ふたりはきっとそうやって、癒えない傷を抱えながら、日々を送るんでしょうね。
涙と笑顔が交互に訪れるのが人生だから。
昏い目のケイシーアフレックは適役。
時々演技してるように見えないところがまた、よかったです。