人気ブログランキング | 話題のタグを見る
NEW POST

宮本輝 『幻の光』

今日、書店へ寄って何気なく、宮本輝『幻の光』 を手にとってビックリ!
なんと、改稿されてるではないですか! 
あのころはなんであないにお金のかかることばかり続いたんやろ
冒頭の哀しい溜息の一行で、見事に主人公の現在の生活、性格を表現していたのに。
ぱらぱら捲っていたら途中にようやく出てきましたが。
再婚相手の民雄が布団の中で背を向けたまま言う言葉も変わってる。
省略されちゃってる。
一番泣けたところなのに。  自分の持っている文庫が見つからないので、記憶では
人には心とか魂のもっと奥に‘精’ゆうもんがあって、それがのうなると、しにとうなるんやて。が、ただ 「精がのうなると・・・・なるんやて」・・・やて。なんか、あっさり。 
この民雄の朴訥ながら優しい慰めの言葉で、そうかあの人は、しにとうなる病気になって
しまったんや、と。ずっと抱えてきた「救えなかった」という自責の念が解けて
ゆくんですよね。   民雄さん、いいひとなんだ。
ゆみ子の息子を、男の子だから上の学校へ行かせてやりたいとか言ってくれて。
‘できた’人なんですよね。

私が泣けた数少ない小説のひとつで、特に思い入れがあったので
改稿がちょっと残念に思えてしまうのでした。


映画では、ゆみ子役が江角マキコさん。 郁夫役に浅野忠信さん。
『誰も知らない』の是枝裕和氏が監督。

浅野さんが歩いてゆく後姿が、寂しげでとても良かった。


だいぶ前に宮本氏が「笑っていいとも」のテレフォンショッキングに出演された時
ご自分の事を話すにあたって、若く弾けた観覧席に向かって、
照れ笑いで「聞いてくれる?」
と静かな小声の関西弁で仰ったのが、お人柄が偲ばれました。 余談でした。

by august22moon | 2007-04-06 01:26 | 読書 | Comments(0)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31