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萩尾 望都 『バルバラ異界(全4巻) 』 小学館

火星の記憶
久し振りにコミックを読みました。1巻までは連載時に読んでいましたが通しで読んでみると、SF大賞を受賞したのも頷ける、かなり凝ったストーリーでした。

眠りの中でみる「夢」と将来を表す「夢」が重なり
現実と思っていた世界が、実は未来の影であったりと
完全にSF世界なんですが
萩尾望都のおもしろいところは、登場人物のキャラクターです。
それぞれ、しっかりとした性格付けがされているので
意外な展開にも説得力が生まれます。
小さな役でもその人物の背景が見えるセリフ。
僅かなひとことにも、無駄なく凝縮した言葉が選ばれています。
当たり前のことですが表情も豊かで的確。

ヒトの夢の中に入り込む「夢見(夢先案内人)」という特殊能力を持つ男が依頼された
眠り続ける少女の見る「夢」は、自分の息子が創造した空想世界と連動していた。
少女の「夢」に現れる人物がこの男が生きる現実世界に現れて
「夢」が実はもうひとつのパラレルワールドだと解る。
少女が見続ける「夢」の正体はなんなのか?

ヒトが受け継いでゆく「体験的記憶」。脳内に刷り込まれた生命の進化の歴史は、なかなか興味深い部分でした。

・・・で、息子とこの男のぎこちない親子関係とか
実験で若さを取り戻した眠り続ける少女の祖母が、過去をやり直し、現在を変えようとしたり、
伊勢、遠軽など実際の日本の地名が使われたり
お神楽の神秘性が描かれたりと
SFの枠に嵌らないドラマも織り交ぜた盛りだくさんな展開。

この男と知故の科学者のセリフが、なんとも「オタク」っぽくて。
極論に暴走するのを、呆れたり宥めたりする若い科学者のキャラもいい。
現実的でありふれた普通の人物を配することで、バランスが良くなる。

あいかわらずの登場人物のユニークさで面白く読めました。
ストーリーは『銀の三角』 『レッド・アイ』 なんかを思い出させました。
それにしても萩尾望都の描く女性って
首やウエストが太くてがっしり体形なのはなぜ?


高野文子も、これほどでなくていいから活動し続けてくれないかしらん。
by august22moon | 2007-10-16 03:46 | 読書 | Comments(0)

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by august22
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