2007年 10月 22日
さい芸 『オセロー』 21日埼玉千秋楽観劇
『オセロー』は以前、AUN公演で鋼太郎さんの演出で観ていましたが
この時のエミリア役は林蘭さん。
スレた感じはジェシカに近く気風の良い逞しい女性という印象で、
泣きながら失意のデズデモーナを慰めるセリフは見事で、言葉の奥に心の傷が見えるようでした。
自らも夫の裏切りにあったことが解った場面では「悪巧みだ!」と何度も半狂乱に泣き叫び、
知らずに手を貸してしまったことへの後悔と怒りが爆発した、それは魂の篭った叫びでした。
蜷川版のエミリア(馬渕英俚可さん)は、デズデモーナにどう声をかけていいか迷い、気休めでもなんとか笑顔を取り戻させたいと心をくだいているという印象でした。
エミリアって出自としては貴族なんですよね。
そのあたりの品もちゃんと出ていたと思います。
夫の企みだったと分かる場面のセリフも搾り出すような叫びで。
絶望感と怒りが伝わってきました。
「柳」の歌声はほんとうに美しく、会場全体が聞き惚れているのが分かりました。
ん~でもやはり「ああ、神さま」と両手を天に向けて伸ばす仕草も
‘決まって’いない。でも可愛いからいいか。
セリフの重みに(オセローのセリフじゃないけれど)「こころが伴わない」。
周りが巧すぎる人ばかりですし、シェイクスピア役者と言ってもいい方々ばかりで、
ちょっと不利だったかもしれません。
それでも時折、巧いと感じるセリフもあり、はらはらと涙するのは儚げな容貌に合っていると思いますが。
壮年の将軍が心奪われるか・・・と考えるとどうしても、物足りない気が。
そのあたりを正当化できるほどのなにかがあれば。
やっぱり、映像のひとなのかな。ひとり、現代劇になっているようでしたし。
でもやっぱり可愛いからいいか。
大きな天蓋で覆われた寝室へ、オセローが小さな燭台を持ってゆっくりと
入って来て、天蓋の奥を見つめる場面は一幅の絵のようでした。
もう、洋さんは本当に凄くって。
ブリッジの上で嫉妬に苦しむオセローに背を向け
虚空を睨んだ冷酷な表情の素晴らしいこと!
悲しむデズデモーナに触れそうで触れない手も素敵(笑)
初演『タイタス』のドキュメンタリー番組で、稽古中に衣装の一部か洋さんの手かが
真中瞳さんのお顔に当たってしまい痛みで芝居が止まってしまった時に心配そうに手を出されたのが写ってましたが、あんな感じ(笑)
ラスト。オセローの嘆きに背をむけたまま涙を流しながらの無表情が
またいいんですよね。後悔なのか、果てない呪詛か、イアゴーの複雑さが現れている見事な表情でした。
中越司氏の舞台美術は今回も斬新で、芝居の素晴らしさを
引き立たせています。
冒頭の怪しく傾いたパリーナや、金属製の階段とブリッジのカンカンと冷たい響きは、危険な雰囲気を増幅させて効果的。
このブリッジが揺れるのでちょっとヒヤヒヤ。
カーテンコールでは、蒼井優ちゃん、明らかに号泣の後という表情。
洋さんが出てきた時、喝采はひと際強く。
2回目から総立ち。
鋼太郎さんが、優ちゃんに拍手をという感じに手を向けると優ちゃん、右手を顔の前で振って、謙遜の仕草。 ・・・・。
蜷川さんも優ちゃんに連れられて笑顔の登場。でもすぐ下がっちゃって、
呼び戻そうとする優ちゃんに手を振って笑顔で帰っちゃいました。
洋さん相変わらず深々とお辞儀。気持ちが伝わるようです。
鋼太郎さんも優ちゃんも観客に手を振るのに
洋さんは照れたような笑顔を向けただけ・・・。(笑)
まだ拍手は続いていましたが無情の終演アナウンス。
雑誌「LOOK at STAR」11月号に洋さんと鋼太郎さんの対談が
掲載されていたんで買っちゃいました。
『グリークス』共演中。鋼太郎さんが帰り道でなにを話しかけても
「はぁ」「へー」って気の無い返事ばかりで
そうとう屈折した男だな、と思われたそうな。
「舞台を離れると、人と距離をとりたがる人間だったんですよ。
今も少しそういうところがありますけどね。」ですって。
ああ・・・そういう感じ分かります。
『お気に召すまま』の公演中には小栗くんが
「高橋洋を飲みに来させる計画」ってのを立てていたとか。
実際、「真夜中に旬から電話で呼び出されたことがある」そうで、
「そうか計画だったのか(笑)」
行ったのかしら? 断りそう(笑)
ちょっと影のある雰囲気がまたいいんですよねぇ。
与野本町駅のホームから
きれいな夕暮れのグラデーションに浮かぶ、さい芸の塔を撮ったつもりだったんですが
バットマンのお城みたいだわ・・・
帰りの新幹線車内にて。
いつものおやじセットでございます。
行楽シーズン真っ盛り、
東京駅は大変な混雑でした。
お土産~
コージーコーナーのケーキ&シュークリーム。
おっきい~(笑)
右隅に写っているのは
待ちきれないと手を出した
妹の指です。
千秋楽行かれたのですね、うううう羨ましい。
あの日は小栗君に会った以上に洋さんのイアゴーに陥落でした。
「触れそうで触れない手」(爆笑)分かるわ~、そうなんですよね、洋さんって。
私も雑誌読みました。大阪でも二人で映画に行ってるんですよね。ニナガワスタジオのインタビューで洋さんが小栗君を憎めないキャラクターっておっしゃってました。小栗君いい子そうですものね。迷惑だったりして(笑)
「リア王」は千秋楽だけ取ったのですが・・・洋さん観たさに寒い中埼芸への道をトボトボ歩くことになりそうです。
洋さんは最近コミカルな役が続いたので、こんなクセのある役柄は余計に魅了されますね。
ただ『あわれ彼女~』のように道化役でも悲哀とか孤独感とか感じさせて、決して「お笑い」に終わらないんですが。
(バレエシーンもちゃんと「四羽の白鳥」「瀕死の白鳥」になっているとこなんて、バレエの舞台観てはまっちゃたんだろうなぁと思わせて。)
次はどんな舞台を見せてくれるのか楽しみになりますよね。
事務所を移籍されこれからは活躍の場が益々広がるでしょうね。
「リア王」でもきっと、寒さなんて心地いいくらいの素晴らしい舞台を見せてくれますよ!
小栗くんは先輩たちにも愛されキャラなの分かりますね。
「憎めない」って私、凄いことだと思うんですよ。
受け取る側がおとなだってこともあるんでしょうけど。
困らせても許せちゃうって、ヤンチャなだけじゃそうはいかない。
人品が備わっているということなんでしょうね。