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PARCO劇場 『SISTERS』 23日ソワレ観劇

『命を賭ける者と賭けない者』
初めてのPARCO劇場。
紅い絨毯が敷き詰められていて靴音がしないのはいいですね。
開幕ベルはスタッフの女性がハンドベルを鳴らすんですね。素敵です。
華やかで、世田パブに次いで好きかも。
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長塚圭史さんの作品は鋼太郎さんが客演した阿佐スパの『悪魔の唄』以来。
ジョークやコントのような応酬が楽しかったのですが、セリフや展開に‘若さ’を感じて、鋼太郎さんの的確で深い演技で成り立った舞台という印象でした。

ストーリーは・・・
ある寂れた田舎のホテル。
女主人でありレストランを切り盛りしていた操子が数ヶ月前に亡くなった。
今は彼女の夫であり、このホテルのシェフである三田村優治(中村まこと)がホテルを経営している。しかし、操子の死後、客は遠のき、優治の料理の評判もいまひとつ。
そこで優治と従業員の稔子(梅沢昌代)は、優治の従兄弟で、東京のビストロでシェフをしている尾崎信助(田中哲司)にレストランの新メニューを作ってもらうよう依頼した。
新婚である信助は、妻の馨(松たか子)と共にこのホテルにやって来る。
このホテルの一室には10年ほど前から、操子の兄であり小説家の神城礼二(吉田鋼太郎)が娘・美鳥(鈴木杏)と共にひっそりと暮らしていた。
美鳥が馨に近づいていくことにより、馨の隠された過去がじわじわと忍び寄ってくる。
(りゅーとぴあHPより


『悪魔の唄』同様、長塚さんの舞台って視覚トリックが必ず使われるんでしょうか。
梅沢さんの場面もあっという間の転換でびっくり。
私の見間違いでなければ、松さん演じる馨が杏さん演じる美鳥を説得する場面でライティング効果なのか、形相が変容して恐ろしげに見えたのも驚きました。
鋼太郎さんはさすがの巧さ。
彼岸花を摘んできた娘に「それは摘むような花じゃない」と諌める言い方も自然で。
しかも惑える歪んだ愛情が滲み出ている。
理論武装している小説家独特の雰囲気が巧い。
娘との近親相姦という罪悪感に惑い、警戒し、揺れ動く男の身勝手さも鋼太郎さんに掛かると正当な気がしちゃって、妙に納得してしまいます。
馨に追求されても、ただ他人に踏み込まれたくないだけの必死の自己防衛に過ぎないのもちゃんと感じさせる。
それに、どんなにシリアスな芝居でもどこかにチラリと笑いを取るんですね。
「ステッカー。」には場内爆笑でした。

部屋の使い方も面白いアイデア!
舞台転換せずに同じセットで二組(尾崎夫妻と神城父娘)の別々の部屋の中の芝居をさせるんですが、交互に演じるだけでなく同時に演じさせたりして。
最後に、それは消せない過去に侵食される現在の暗喩なのか、いつの間にか床に水が満ちてくる表現も新鮮でした。引き潮だった砂浜が満ち潮になるよう。

松さんは何を演じても清々しい。特に今回は美しい。
精神的不安定さを表すせっかちなマフラーの編み方や、秘密を持った謎めいた雰囲気など巧いのですが、周囲の役者さんたちがスローボール(セリフ・芝居)で投げ渡すのに比べて、おもいっきり速球で遠投している感じ。
それはそうゆう役柄としてなのかしらと思ったり。
『ひばり』でもこんな感じだったかなと、ふとホワイエに置かれたモニターを見ると、上映中の『おはつ』DVDでもそんな喋り方でした(笑)

田中哲司さんは、過去のトラウマで神経症に陥っている妻を見守る包容力ある夫役。
限りなく優しい夫。背中も大きく見えます。って実際大柄な方ですが。
田中さんの雰囲気に合ってると思います。
カフカの『城』でKを演じられましたがこちらの役ほうが似合ってると思いました。
馨が美鳥を説得しながら徐々にトラウマを露わにするセリフや
礼二と美鳥の結末まで、決して納得も感動もできなかったのに
涙が出たのは、このあまりに優しい夫が必死の眼差しで妻に叫んだひと言でした。
「帰ろう」
馨が応える声はもっとか細い声の中に決意を込める感じでも良かったんじゃないかしら。自力で這い上がった感だから良いのかしら。 

パンフでは、この芝居のテーマでもある‘血縁’‘心の傷’について出演者にいくつか質問がされています。
その中の「心に深い傷はありますか」という愚問に、比較的率直に答えているのが心打たれました。特に鋼太郎さんの家族感ともいえるお話は泣けました。
杏ちゃんはさすがに、「う~ん、出てこないです」。まだ若いですもんね。




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エレベーターを待つ間、
窓から見下ろした街に
山手教会。














PARCO劇場 『SISTERS』 23日ソワレ観劇_d0109373_23255749.jpg

駅弁の鰻は皮が固かったりするし、いくら盲目的味音痴的になんでも食べちゃう私だとて食べないんですが、これだけぽつりと残ってまして。ふっくらやわらかとの謳い文句に誘われて。
明日は土用の丑の日ですし~
確かにふっくらでした。
 
Commented by Franny_G at 2008-07-25 05:11
おっしゃるとおり、ユーモアがあるんですよね、長塚作品。
そこも好きだったりします。

かなりヘビーな内容でしたが、そんなところでも重くなりすぎないようにしてるんですね。

吉田さん凄かった!松さんも細いし美しいし。
田中さんが優しそうであの壊れた世界で唯一の良心で、何だかファンになってしまいました(笑)
Commented by august22moon at 2008-07-25 23:50
鋼太郎さん、ほんと凄いですよね。
シリアスな芝居で圧倒されて突き放されるんじゃなく、ちょっとした笑いでほっとさせて。惹き寄せられちゃうんですよね。

田中さんはTVでは、役に恵まれてないなと思っちゃうんですが。
今回の役はいい役でしたし、魅力が充分活かされてましたよね。
by august22moon | 2008-07-24 03:28 | 観劇 | Comments(2)

出会った本、映画の感想。日々のこと。


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