2008年 08月 05日
トルストイ民話集『イワンのばか他八篇』 岩波文庫
「小さい悪魔がパンきれのつぐないをした話」
償いと言っても小悪魔くんですから、人を悪事へ導くんですが。
畑仕事中の貧しい農夫からなけなしのパンを盗んだのに毒づくこともなく「入り用だったに違いない。食べさしておくがいいや」と悠長な。
大悪魔にもう一度行って来いと怒られてしまう。人のいい農夫を貪欲で不真面目な人間にするため、小悪魔は農夫に近づいて画策。
「人にはどれほどの土地がいるか」
これも貧しい農夫が裕福な暮らしを求めて、広大な土地を僅かな謝礼で譲ってくれる民族がいると噂を聞いて出かけてみる。これも欲をかき過ぎて自滅してしまうお話。
「鶏の卵ほどの穀物」
謎の物質が発見され王様に献上される。家来たちに調べさせるが、どうにも判らない。
古老に尋ねてみるが、もっと古い世代に尋ねてみないと判らないと言う。
どうやら昔は生えていた穀物らしいと判るが、ではなぜ絶滅してしまったのか。
「三人の隠者(ヴォルガ地方の伝説から)」
ある僧正が船旅中、三人の隠者が行をしている島があるという話に興味を持ちその小島に上陸してみる。ところが会ってみると、お祈りの言葉を知らないというので僧正は一日かけてお祈りの言葉を教える。ようやく言えるようになった隠者と別れ船に戻り、夜の海に浮かぶ小島の方角を眺めていると・・・。とってもファンタジックなラストでした。
「悔い改むる罪人」
生涯を罪深く生きた男が天国の門を開かせるために、次々現れる聖人に我はあなたと同じなのだと口八丁に懇願をするお話。
「作男エメリヤンとから太鼓」
貧しい作男とは不釣合いな美しい妻を見初めた王様。その妻をなんとか奪おうと王様はエメリヤンに無理難題を押し付ける。どうやら妻の魔法のおかげらしく、なんなく片付けられてしまう。それなのに当のエメリヤンは妻の正体にまったく気づかぬ様子。
エスカレートし続ける王様の要求は逆に身を滅ぼす結果に。
「三人の息子」
父の財産を譲り受けた息子たちが真の幸福を得る事ができたのか。
父の遺言の真意が判った息子はいたのか?
どちらのお国にも似たような設定のお話ってあるものなんですね。
後期トルストイの宗教性、道徳性の色濃い民話集でした。