2009年 06月 24日
木村大作監督作 『剱岳 点の記』
アーケードには七夕飾り。
仕事帰りに映画 『剱岳 点の記』 を見に行くことにしました。
先ずはお夕飯。
Cat’s cafe さんでカルボナーラとアイスカフェラテ。
【千年の青白き塔】
さて。CG、VFX全盛の昨今。ストレートに、雄大な大自然の映像が展開します。
(実際、始まるまでの予告篇は「ノウイング」「2012」でしたし・・・)
ヴィバルディの「四季」をBGMにして展開する、夕陽・雲・四季折々の木々や花が目に心に優しい。
神が創りし美しく厳しい自然界に生きる人々もまた美しく描かれています。
後になってふと、星空はさぞ凄かっただろうに写されていなかったと気づきました。なぜなのかしら。
山岳信仰盛んで、「立山曼陀羅」と呼ばれる宗教絵画に於いて剱岳は剣が何本も集まったように描かれています。巡礼者たちに向けてこの曼陀羅の‘絵解き’をする場面でも、登ってはいけない山として禁忌が布かれていると説明されます。
弘法大師が草鞋三千足を費やしても登れなかったと伝えられ、その峻険まさに剣であることを映像が示します。
夏八木勲さん演じる行者が崖の先端で剱岳山頂に向けて経を唱える姿は、崇高な画でした。
山の案内人で後に雪渓‘長次郎谷’の命名由来となる宇治長次郎役に香川照之さん。
腰が低く生真面目な好人物を体現され見事です。
次年の登攀に向け草鞋を編む姿を、女房の佐和が「楽しそうね」と言うんですが、この時の香川さんの表情がいいんです。無表情なのにいつもとは違う何かを女房は感じとっているんですね。その背中に感じさせるという演出も良かった。
この奥さんがまた働き者で。一生懸命に竈でごはんを炊く姿がいい感じ。
最初は鈴木砂羽さんと分からなかったくらいの風貌で、出番は少ないですが山男の女房を好演されてます。
夕飯のお膳を置いた時のカチャカチャという音が良かった。
これから厳しい大自然の中に入る前なので特にこんな生活音が耳に心地好かったのかしら。
測量手の柴崎役の浅野忠信さんは好きな俳優さんなんですが、そのセリフ回しが独特でした。
いつもこうゆう喋り方だったかしら。セリフっぽくなくナチュラル。表情と共にフラット。
靴紐を結びなおして、いざ剱へと顔を上げる目も。
予告篇でこの表情を見て、どの場面なのかと思ったんです。
演技してないような目が印象的で。
緻密に人物を構築して全身に役柄を浸透させる香川さんとは対照的な役作りです。
でもその無表情に柴崎の生真面目な人柄が見えました。
さて、遂に頂上に辿り着くんですが、なんとそこには錫杖と剣先が奉納されているのを発見します。
事実上の‘初’登頂ではなかったんですね。
それは、遥か奈良時代の修験僧のものであろうと言われているそうです。
信仰の力の凄さを感じさせました。
一瞬、空海が本当は登れていたのではないかと思ってしまいました。
キャストに所謂二世俳優が多かったですね。偶然でしょうが。
香川さん、松田龍平さんだけではなく、川谷拓三さんの息子さん仁科貴さん。(口応えの出来ない強力という立場故、生田に対し不満で睨み返す表情が良かった。)
蟹江敬三さんの息子さん蟹江一平さん。日本山岳会メンバー役橋本一郎さんは、柴崎が師と仰ぐ古田測量手役の役所広司さんの息子さんでした。
全てのスタッフ・キャストの名前が流れるエンドロール。
そこには肩書きも担当もなくただ、「仲間たち」。
山って凄い