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ブライアン・シンガー監督作 『ボヘミアン・ラプソディー』2回目

d0109373_2317313.jpg先日ようやく2回目。
地元ではどんなヒット作でも、公開2週間も経てば客席はぽつりぽつりなのが当たり前なので、小声で歌えちゃうかな?とレディースデーのしかもレイトショーで見に行きました。
が、お客さんが結構入っていて。
歌えないじゃん!

応援上映もありましたが、行きませんでした。
一緒に笑い声をあげたり驚きの声をあげるのは楽しいんですよ。
むしろ、ダースベイダーが出てきたら、おお~っと驚けば?なんてね思うんですよ。
ジェイソン・ボーンが、屋上から隣のアパートの窓に飛び込んだら、イェ〜イ!と歓声あげれば?と思うんです。
でも一緒に歌ったりするのは好きくないの。
『アナ雪』はいいの。あれは子供たちが歌うからいいんです。
世界的人気の日本人作家のファンが集うお店なんて、ぞっとしますのよ。
(ライブで歌ったし。「手をとりあって」を。一緒に行った友人は、日本語部分を全て観客に歌わせたので、「憶えてないな、あれ」と笑ったっけ。)

2回目ですから、フィクション部分や時系列の違いなど落ち着いて見られました。
YOUTUBEでライブ・エイドも見直して。
その再現力が完璧と評判ですが、ラストの4人の立ち位置まで同じなんですよね。
3人を振り向いた時のラミ・マレックの表情が、万感の思いが籠っているように見えました。

ライブ・エイドまでの道のりが巧みな構成で、やっぱり泣けちゃった。
こうして、ライブ・エイド前に発病が診断されてたこととすると、セットリストの歌詞全てが、心に響いてくる。
ドラマチックな歌詞に込められた、身を削るような言葉。
プロデューサーの無知に、遠い目で多くを語ろうとしなかった。
ブライアンたちは、どれだけ気付いていたのかな。
知的な彼らのことだから、察していて、血と涙の滲んだその言葉たちを黙って受け入れていたのかな。

特にブライアンの描き方がとてもよくて、彼がいかに包容力のあるひとだったかが描かれていると、改めて感じました。
和解を求めるフレディに、3人だけで話したいと退室を求めた時、理由を尋ねるマネージャーに、なんとなくだと答える。
もう既に許してる表情。準備はできていたという表情。
メイ博士、おとなだ。
ジョンも人柄が表情に巧く表されていて、言い争いの最中に「Another One Bites The Dust 」のリフを弾き始めるなんていかにもジョンらしい。
フレディの告白を聞いてなにも言わずただ静かに涙を流しているのも、彼らしい。

似てないロジャーも、演奏中のおくちムーをちゃんとやってくれてたし
しかし、フレディの新居で、食事を断って帰ると言った後の、あのハグがね、凄い気になって。
ハグする前のやりとりが、簡単すぎやしないか。
なんだろう、あの別れは。


IMBbで見つけたメイ博士親子(笑)と、傑作な加工。
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来日シーンがカットされて「’39」が聴かれないことより、「'39」が選曲されてたことが嬉しい。
いつか完全版で見られるかも、ですものね。
あの、いかにも天文物理学を専攻していたブライアンらしい歌詞が好きだったんです。

一番好きな曲はと考えると、1曲に絞れないんですけど。
「ボヘミアン・ラプソディー」ではなかったんですよね。
でも、今頃になってではあるけれど、強烈な詩。

憂さ晴らしのように「Keep Yourself Alive」や「Brighton Rock」を繰り返し聴いてたかなぁ



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by august22moon | 2018-12-07 23:00 | 映画 | Comments(0)

中江和仁監督作 『嘘を愛する女』wowow放映

d0109373_22125465.jpg特に珍しさもないお話しですが、旬の俳優さんの起用と、CMディレクターらしい随所に美しく凝縮された映像で、ストーリーの脆弱さを補っていました。
なにより、エンドロールに流れた歌が素晴らしかった。
余韻を活かしただけでなく、この歌が欠けを補填していた感じです。松たか子さんの、呼吸まで入れた透明感のある歌声も素敵。
誰の作詞だと画面を凝視して、ああ、なるほどと納得。流石です。
「話聞いてないね 声は聴いてたよ」
桔平の、刹那と過去の狭間に揺れる心を表しているようで、いかにもこのふたりの会話っぽい。
脚本もそうだったら、突き刺さるような言葉が聞かれたかも

主役の由加利は、所謂キャリアウーマン。
男勝りにも生きてきたであろうところ、未曾有の災害に遭って、思わず出てしまった弱さを、優しく支えてくれれば、それはコロッと好きになっても仕方ないのかな。
しかし、知性も教養もあるおとなの女性が、5年もの間、素性になんの疑問も持たなかったというのは如何なものか。
盲目になってしまったとしても。

で、この由加利が、気位が高いんですね。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』で、涙ながらに「ほんとうの名前を教えて」と縋ったブレンダのような女性ではないわけです。
警察には告げず自分で真実を探ろうとする。
研修医だと言っていた病院で、職員に渡したIDカードの偽造を怪しまれて、ひったくるように取り戻す。
密かに慕っていた女の子に挑発されれば、ひっぱたく。突き飛ばす。
探偵の調査結果を待てずに、資料を奪って自分で確かめに行くのも、裏切られた憤りがあるから。

資料を読み耽って寝坊して、大事な仕事に穴をあけ、確固たるものだったはずの地位はあっさり奪われる。
「嘘」は、その日々もことも言ってるのかもと思った次第です。

一番、由加利という人間を表していたのが、探偵と島の住民に尋ね回っている時、初対面の相手にする態度があやふやなところ。挨拶・お礼をちゃんとしないのよ。
探偵だけに相手を警戒させないように気遣いのある態度で接したり、まず丁寧に挨拶し、最後には深々と頭を下げてお礼をする。探偵の常識なんでしょうが。
女にしてみれば、どんな真実が表れるかと怯えがあるのかもしれませんけどね。

それだけでなく、この女性は謝らないんですね。遅刻した職場でもそう。
書きかけの小説を読みふけって、仕事に遅刻しても第一声が、「私が説明しないと」。
毎晩遅いうえに仕事の付き合いで深酒なのを心配する桔平を見下す言い方で撥ねつける。出て行った桔平を追いかけはするんですが、謝るどころか、結婚を匂わしたりする。男女逆転。
都合のいい男としか見ていない。

ようやく勤め先の情報を得るんですが、この時の職場のリーダー的立場のひとが、警戒してすぐに答えないというのも、遂に突き止めたようにみせて、実は既に警察が来ていたゆえの警戒心だったという、犯罪の匂いで一気に不安にさせるこの辺りの演出は巧かった。

自分だけが知っている、無垢な部分が明らかになって、ふたりの間に真実は確かにあったと分かるっていうのはね、説得力がありました。

桔平が書いていた小説は、由加利との「未来予想図」ってことなわけですね。
研修医だと偽って、その時間をつぶすのに 小説書いてるしかなかったんでしょうね。

映像は悉く決まって、印象的。
人混みの中に見え隠れする後ろ姿。
ふたりがはしゃぐ公園の日差しの暖かみ。
帰りを待って外を見ていたことを示す半分開いたカーテン。
その窓辺で佇むシルエット。
コーヒーの香りを感じる重厚な内装の喫茶店。
瀬戸内の穏やかな光る海。
カウンター内で小説の原稿を読む女将さんの姿勢(この女優さんの芝居ではじめて巧いと思った)。
バスルームへ駆け込むカット。
靴擦れした足で歩く波打ち際。
薄暮に立つ蝋燭灯台。
春まだ浅い季節の、清々しい風の舞い込む病室。
適温で、的確に、表されていました。

鋼太郎さん演じる探偵の、愛車がパンダてのがいいセンス。
怪しげなハッカーを雇ってるけど、事務所も小綺麗で適度におしゃれ。
この探偵も、家族を疑ってしまった過去があり、由加利の心情が理解できるという役どころ。
最後に娘に会いに行くんですが、金八先生のオープニングみたいな土手の道をやって来る娘を、下から登ってきて声かけるってのが、よかったです。
ちょっと足滑らせたりして、かっこわるいとこ見せて。
99.999%と言われたあとの誤魔化し笑い。
巧いったら。

肝心の泣かせ処であろう、昏睡状態の桔平に泣きながら訴えるの図は、演出の手助けが必要。
個人的には醒めどころでした。
しかし、いかにも永い眠りから覚めたという高橋一生さんの表情は素晴らしかった。

そこからの

♪ 海岸までとおく~


なんて美しい余韻


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by august22moon | 2018-11-30 23:00 | 映画 | Comments(0)

ルーベン・フライシャー監督作 『ヴェノム』

d0109373_04339100.png MARVELを見るのは2作目です。
純粋にソニー&コロンビア作品としては第1作となるんでしょうか。
毎年毎年、ディズニーとフォックスが怒涛のマーベル攻撃ですが、『ドクターストレンジ』しかまともに見ていません。『スパイダーマン』も第2作までしか見てないですし、あれほど人気の『アベンジャーズ』は1作も見ていません。
でもね、トム・ハーディーですので。

とても面白かったです。
ストーリーではなく、会話が。
残虐なエイリアンに寄生され、ダークサイドに転落・・・かと思いきや、結構テンポのいいバディムービーでした。

なんたってトム・ハーディーですから、人間を捕食しちゃうような狂暴なヴィランだからといって巧く操って共生しちゃいそうです。

殺し屋たちに銃を向けられてホールドアップすれば、みっともないからやめろバンザイしてんなーと腕を下げちゃったり、バイクで逃げれば無茶な爆走して、エディはヴェノムと反発しあい抵抗するんですが。
怖がるエディを死なせないからだいじょーぶと気遣いもあるからか、徐々に折り合いがついていくんですね。

サンフランシスコ特有の地形を利用した見どころのカーチェイスシーンは、大迫力で面白かったです。
やっぱりバイク似合いますね、トム・ハーディーは。

高層ビルの外壁よじ登られて懲り懲りなエディが、帰りはエレベーターで降りようとすると、「ビビりだなー」なんて冷やかす。
心の中まで見通せるらしくて、別れた恋人に「ちゃんと謝るなら今だぞ」
いい奴かっ
SWATに銃向けられ、「マスク!」「コピー!」の合言葉を真似したり。
パラサイトとエディに言われ、「寄生!?(parasite) 謝れ!(Apologize)」
漫才かっ

と、会話が可笑しくて、エミネムもかっこいいし、大満足なんですが、いかんせん展開が雑。
なぜヴェノムは、エディが気に入ったのか。
どんな「負け犬」っぷりだったのか。
なぜライオットを殺して、地球を守ろうとする気になったのか。
肝心なところが説明されてない。
「バイバイ、エディ」って言わなかった?
ミシェル・ウィリアムスも魅力的なんですが。あっさりヴェノムに同化して、力を利用して。
せめぎ合いはなかったのかしら。ケロリとしてましたけど。

『スパイダーマン3』見てないから?

長々とスパイダーマンの新作紹介するなら、その時間でやれることいっぱいあったよ


映画
by august22moon | 2018-11-22 23:00 | 映画 | Comments(0)

ブライアン・シンガー監督作『ボヘミアン・ラプソディ』

d0109373_23214947.jpg初日を見てきました。

いや~待ちました。待ちすぎて、ほんとうに企画進んでるの?と訝しくなり、遂には諦め気味に。
ですから完成が報道されて公開日が決まると、その日を指折り数えていました。
前にも申したかと思いますが、クイーンの来日公演を武道館へ見に行ってるほどのファンでしたので。仕事中からソワソワ。
初めてです。ドキドキして映画館へ向かうなんて。

この作品はクイーンというよりフレディを描いているので、総じて3人はエピソードでその人となりを紹介しているに留まっています。
ロジャーファンの私にとってはきっと物足りなくなると覚悟はしておりました。
俳優さんもまったく似てないし。ボブ・ゲルドフさえ似てたのに。
Dr.メイとジョンが、本人じゃないのってほど激似でしたのでね、余計に。
演奏時の動きまで同じなんですもの。
可愛いだけじゃないのよ、ロジャーはぁ
(予告編にあった猫と戯れる場面、ないじゃん!)
ファンだった頃は、情報量が極めて少ない時代。ミュージックライフの記事くらいしかない。
ですから、知らなかったエピソードが見られると楽しみにしてました。
ブライアンとロジャーが製作に関わっているんだから、多少盛ることはあっても、創作はないでしょうし。
キレてキッチンのもの投げまくって、ブライアンとジョンに、「コーヒーポットはやめろ!」とすかさず窘められるなんてのを知れたのはちょっと嬉し。
あのお二人はそうゆう風に、宥め役だったんだろうなぁ
「ガリレオフィガロって誰だよ」も、きっとホントに言ったんでしょうね。
似てないから事実に思い難いけど。
ドラの打ち方はねぇ、ちょっと違うかなぁ
日本公演では、打った後に観客側に向き直ってから、肩越しにバチを投げ落としてたりしてたんですよね

いやしかし、ラミ・マレックは頑張ってくれました。
誰であれ実在の人物を演じるのは難しいことでしょうけれど、ラストのウェンブリーでは、もうまったく違和感なくて。再現力が圧巻。
ステージングだけでなく、揺れ動く真情の表し方も素晴らしかった。
土砂降りの雨の場面は、心身のバランスに悩む姿が哀しい。
暴露インタビューのTVをひとりで見ている姿も、世界の瓦解を静かに迎えているよう。
あのプライドの高いひとが、こんなに苦しんだなんて。
ママに約束した投げキスも、まるで人生への別れのキス。

感動とか号泣のラストなんて宣伝が煽っても、泣くまではないと思っていたんです。
ところが。冒頭の20世紀FOXのファンファーレが、ブライアンのギターじゃないですかっ
しかもフレディの声まで。なんて粋なプレゼント。
もうそこで、じわ~っと来ちゃいました。
そのせいなのか、スローモーションでフレディーがスタジアムへ向かう後ろ姿を追った、冒頭の場面でもう既に泣きそうでした。ラストどころか。

フレディがメンバーに病気を告白する場面は、エモーショナルにせずストレートに描いて、ストレート過ぎて、むしろ平凡な演出ではあるんですが、なぜか涙が流れちゃって。
ロジャー役のベン・ハーディはそれまで特に印象的な芝居もない(やりようがない)んですが、この時の驚いた表情がとても良かった。
ルームシェアして、一緒に古着屋やってたくらい親しかったんですもんねぇ
晩年のフレディのことを語って堪え切れず泣いちゃったインタビューも過ったかなぁ

ライブエイドで、音量を勝手に上げたというエピソードは、ちょっと驚き。
巨大スタジアムに相応しい歌唱力とサウンドであることを示すことになった。マネージャーグッジョブ。

セットリストも、フレディの心境に合致している歌詞ばかりで、切ない。

アップ映像がやたら多くて気になったけど、いい作品に仕上がってました。
応援上映でしたら全曲歌うところですが、クチパクで我慢していました。
クイーンが大音量で聴ける日が来たことだけでも夢のようですからね。

胸がいっぱいで、興奮冷めやらずで、スマホにダウンロードした、ライブエイドでも演奏され来日公演のオープニング曲でもある高速We will rock you をリピートして聴きながら帰りました。


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映画
by august22moon | 2018-11-10 23:00 | 映画 | Comments(2)

アニーシュ・チャガンディ監督作 『Search/サーチ』

d0109373_1943737.jpg【Mam would be, too】
全編PC画面で構成されると聞いて、それはちょっとストレスフルかもとアナログおばさん二の足を踏んでいましたが、主演のジョン・チョーが気になっていて見てみました。
予想以上に面白かったです。
それは、決して最先端過ぎず、今という時代の側面であるからですね。
10年後はもう既に変わっていることでしょうけれど。

母親は病気で亡くなって父と娘の二人暮らし。
録画した入院中のようすをPCで見たりしているんですが、やがてPC上のカレンダーが映って、そこに入力された「退院日」の文字がコピペされ数日後に移動する。退院の日が伸びたんですね。
やがてその文字が削除されることで、母親が退院することなく亡くなったことが表される。
これはなかなか巧い。
カーソルの動きやひとつの画像が映っている長さで感情が表される。それはより想像を膨らませる効果がありました。

ほぼほぼPC画面だけのお約束は守られていて、通話もスカイプ。
検索しながらできるから便利という理由が成立するんですね。
スマホで連絡とるのもフェイスタイム。
PCを離れたり本人が撮影すると不自然な状況では、第三者が撮って動画サイトに投稿した映像、ニュース、防犯カメラ、記録用カメラの映像で展開する。
いつ連絡があってもいいように点けっ放しにしてるので、そのカメラが父親を映し続ける。
というわけで、俳優さんの芝居もちゃんと見られる仕組み。

真っ白になったスクリーンの左の縦幅いっぱいに黒い線が表れて、何かと思いきや、それは文字を打つ時に出るポインター。
カタカタという音とともに、文字が打ち込まれ始める。
漢字変換なんてないから(スキル以前に)文章の完成を待たされることもないんですね。
打ち込まれた文章がドラッグされて削除されることで、言おうとしたことを我慢するという感情も表されます。
ええ!?こんなに長文打ってたの!?なんてことも。

家に置いていった娘のPCで、友人の連絡先やどんな学校生活だったのかを調べるんですが、IT企業に勤務しているのか、スキルがあるから非公開のSNSの開封もサクサク。
娘の車が通過した場所が判明するや、ストリートビューで即確認。その先に何があるかもすぐ調べられ、インスタの写真にあったと気付く。
あちこち開いて手早く手際がいいうえに勘もいいので、検索に無駄がなくて、スピーディーな展開にさせていました。

広告の写真が出たままになっているので、どうした?と思っていると、さっき見たLINEのアイコンが横に出てきて、照らし合わせて同一人物だと分かる場面も、父親が凝視して考えているのを示している。

画面構成だけでなく、意外な真犯人判明の瞬間も面白くて、結構驚いちゃった。
伏線の回収もお見事。
母親が狼狽えたようにきつく息子を制したのは、そのためなのか。

しかし、楽しそうなクラスメイトたちのインスタに写りこんでいる、寂しそうにひとりでランチをとってる娘の姿をみつける父親の心情たるや。
諦めず再捜査をさせて、その執念が実ってよかった。

母親のことを思い出させるのは辛いだろうと気遣っていたのが、反ってよくなかったと気付いて、以前は一旦打ち込んで消していた、「自慢の娘だ」に続く「ママもそう思ってるよ」のひとことを、最後に打ち込んで終わるのは、いい場面でした。
文字だけなのに。
いや、文字だけだからこそ、そこに込められた万感の思いが、伝わってきました。



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by august22moon | 2018-11-08 23:01 | 映画 | Comments(0)

大友啓史監督作 『億男』

d0109373_183355.jpg先週のレディースデーにレイトショーで見たんですが。
独占状態。

なんだか・・・
出てくる人の誰にも、共感も理解も出来ませんでした。

一男は借金だけでなく家庭もあるのだから、使う目的ははっきりしている筈なんですよ。
迷う意味がまず納得いかない。
3億という数字がいけないのかなぁ
アメリカの宝くじみたいに数100億なんていう非現実的な数字ならせめて、一男がどう使っていいか戸惑うのが共感できたかなぁ

家、車、子供の教育費。バレエが好きで習っているんだから、今後もしかしたら海外でバレエを学びたくなるかもしれない。ローザンヌに挑戦したい、とかね、言い出すかもしれない。
自分たちの老後のこともある。
先ずは豪快にばら撒くことを薦められて、拒みもしない。
娘が、欲しいのを我慢していた自転車のことを、真っ先に思い出さなかった。
そんな愚かさというだけでは、出発点も着地も、説得力が弱い気がしました。

既に巨額の売却資産を持っている元・共同経営者の理念や哲学なんて、漠然としてるし。
一見、金の亡者ではないように見える十和子も、資産を銀行に預けず家の中に隠し持っている。
大金に囲まれて生きているわけだから、お金に興味のないという夫も、薄化粧の地味な風貌も、単なるカモフラージュに過ぎない。


唯一、理解できたのは、九十九が友人の金を盗むような人ではないと信じる根拠。
貧富の差による金銭感覚のまるっきり日本とちがう国で表わされた九十九の理念を、揺るぎないものであると、一男は身をもって痛感したのではないかと。

九十九はきっと地の果ての国のなにもない砂漠こそが無垢なもので、自分がこれから歩み出して行くための決意を固めてくれる場所だと思ったんだろうなと。
ロレンスが感じたような「清潔な」砂漠に立つことが必要だったんだろうとね。

モロッコの場面は、画としては、とても力のあるものでした。
ラクダに乗って砂山の稜線を行く画なんて、まさに絵になっていて、美しかったです。

九十九は吃音症という設定ですが、高橋一生さんがとても自然で、この男の背景を滲み出させることに成功していました。
『民王』でもそうでしたが、英語の発音がお上手。

豪遊させてお金を粗末に扱わせて持ち去る作戦の意図は、ちょっとよくわかんないですけど。
電車の窓越しに九十九は、ほらあれだよとばかりにちょっと悲し気に微笑みながら一男に送るんです。
「また夢になるといけない」

『芝浜』、強し。



映画
by august22moon | 2018-11-05 23:00 | 映画 | Comments(0)

福田雄一監督作 『明烏』 BS日テレ放映

d0109373_014782.jpg地上波で福田雄一演出の連ドラが始まるのに合わせて、福田雄一祭り状態で放映されていた作品のひとつ。

自身が座長であるブラボーカンパニー上演作品を映像化されているのですが、スクリーンだからと場面を広げず、小劇団のシットコムらしさが残されているのも面白いところです。

タイトルは落語の『明烏』を持って来ていますが、内容は『芝浜』。
サゲまでも知られているお話を、いかにも福田作品らしい可笑しみでアレンジしています。

落語の醍醐味といっても過言ではないと思って好きなところは、サゲの一言を言いながら落語家が頭を下げてお辞儀をする、その意気なところです。
『芝浜』は特に意気で、発生させる余韻も見事で好きです。

今作も、勝五郎である菅田さんが、乾杯の酒を飲むのをやめて、満面の笑みで「また夢になるといけねえ」とやって、エンディング。

佐藤二郎さんといえば、共演者泣かせなんじゃないかと思うほどの自由すぎるアドリブを繰り出しますが、今作ではムロツヨシさんの芝居の可笑しさと動作の奇妙さで、吉岡さんが笑いを堪えている仕草がありました。
『女子ーズ』はそんな場面が多かったですが、まあ、やってるご本人もそれ狙いなんでしょうし。
そんなのを見ているのもまた面白いですね。



映画
by august22moon | 2018-11-04 23:00 | 映画 | Comments(0)

ジョン・マッデン監督作 『女神の見えざる手』wowow放映

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邦題がいいですね。
経済のおはなしじゃないけれど、「勝利の女神」にもかけていて、世界の理として、的を射ていますね。

クールビューティー、ジェシカ・チャステイン独壇場。
銃規制に係るロビイストの闘いを描く、というより、原タイトルどおりエリザベス・スローンというひとりの女性の生きざまを描いています。

なんだかフェイ・ダナウェイが演じた『ネットワーク』のダイアナみたい。
勝つために選ぶ手段が容赦ない。

実は部下をスパイとして潜入させていたとか。
自らすら犠牲にして、意図的に汚点を残しておくとか。
違法な諜報屋を利用してるとか。
マットな深紅の口紅で武装して無敵。

しかし実情は、興奮剤らしきカプセルを頻繁に服用してなんとか自分を支えている。
睡眠障害を患っているという壮絶なプライベート。
気の休まる時がないじゃないの。
しかし、いつものオーダーと違うエスコートサービスが来たのにあの油断はなんでしょ。
どこかうしろめたさがあったからか。そこも弱みだったのかも。
パーティー会場で遭遇して声かけるという、プロ失格なことした時点でこの男を怪しまなかったのか。
聴聞会に現れたときの驚いた表情からすると、気付いていなかったのかな。
しかし、この逆転劇が面白かった。
彼女は非情な策略家だから、実は怪しいことは気付いて、この男を味方につけるべく弱さをちらつかせたのかもしれないですね。
最後はプロらしいことをして、詫びをいれたわけですね。女神がちょっと微笑んだ瞬間。
この場面は、数少ないスローンが狼狽え、感情が乱れかかる場面なんですが、チャステインの表情が素晴らしかった。敵側に悟られないよう努めてでも漏れ出てしまう感じが。巧い。

銃規制法案可決になぜここまで執念を燃やすのか。バックグラウンドが提示されれば、彼女に感情移入しやすいのですが、銃に関して恨みがあるとかいうありがちな女性にしないところが面白い。
その原動力が正義だと答えるのも、果たして真実なのかと疑わしくなる。
誰にも自分を語らせない孤高。


刑期を終えて出てきた時の視線の巡らせ方、秀逸。



映画
by august22moon | 2018-10-30 23:00 | 映画 | Comments(0)

三池崇史監督作 『無限の住人』 wowow放映

d0109373_9184352.jpg残虐さや殺陣のスピード感など三池作品らしい。
冒頭のモノクロにした百人相手の大立ち回りは迫力があって主演の木村さんも太刀の重さを感じる殺陣でした。

ただ、この作品でわたくし的に一番の残念な点は、適役のビジュアルが荒唐無稽を超えて悪趣味なものであったことです。
せっかくの緊迫感が一気に醒めてしまいました。
特に女性陣が・・・なんとかお銀みたいなんやら、金髪やら。殺気ゼロ感甚だしい。
凛のあの電車の吊り輪みたいなんも。ずーっと気になりっぱなし。
原作を踏襲していてそこに意味や理由もあるんでしょうけれど。
2次元で表現されるからこそ成立する面白さを、生身の人間が纏うと滑稽になってしまう。
セリフも現代的な単語が多いし。
市原さんみたいにギリ大丈夫なのもいるんですけど。
海老蔵さんは立っているだけで絵になる役者さんなので、異形の者の美しさまで表されて、もっと見たかった。
田中泯さんは出てくるだけでその殺気が映像を緊迫させました。そこだけが救い。

で、万次はかなりな腕前であることを冒頭で示してますが、不死身を表すためか、手下たち相手で既にかなり致命傷を受けちゃうんですね。手こずりはするけど勝つってんじゃないのね。不死じゃなきゃ負けてるのね。

不死となって登場する背中にも、もう少し、幽鬼のような異形の者の気配を演出してもよかったんじゃないでしょうかね。
無間と無限の違いかなぁ

思えば『るろうに剣心』も劇画原作で、キャラクターは時代を超越して斬新なところがありましたが、幕末という和洋折衷の時期を巧く活かして、服装と少々髪型を変えるに留めているので、まだ許せました。
蒼紫なんてかっこよくて、時代考証無視全然オッケイになっちゃった。
志々雄なんてファンタジーな人物は演じる俳優さんの力で生かせていた。

大団円のvs三百人の斬り合いも大迫力ですが、そこに巻き込まれる形になる設定がちょっと納得しきれず。
逸刀流を殲滅させるための幕府の戦であって、凛と万次は闖入者になってしまっている。
仇討ちのチャンスを逸した凛が、まるで天津側に着いてっちゃってるような動きも気になりました。
見せ場のための設定にさせないなんか方法なかったのかなぁ

主演氏が頑張っていて、覚悟を感じられたので、周辺をもうちょっと頑張ってあげてほしかったなと、残念ではありました。


映画
by august22moon | 2018-10-13 23:00 | 映画 | Comments(0)

マーク・フォースター監督作 『プーと大人になった僕』

d0109373_16133192.jpgこの前の週から咳が出始まって、収まった日がちょうどレディースデーだったので行ってきました。

気分転換もあって、イギリス英語が聴きたい気分だったのですが、吹替版しか上映時間が合うものがなくて。

でも、堺さんの穏やかな声がとても心地よくて、ユアン・マクレガーの顔立ちに合ってるかというと合ってはいないんですが、そんなこと気にならなくなるほど、良かったです。
ともすれば堺さんの芝居のほうが巧いんじゃ?って場面もあります。

やりたくもない仕事を押し付けられて苦悩して、家族で楽しみにしていた休暇も返上させられて頑張ってるのに、「ダンスしてる時のあなたの笑顔が好きだった」だの「それ風船より大切?」だの、ワーカホリックだと堺さんを板挟みにして苦しませないでよぉって感じです。
現代でないぶん、さほど家庭を犠牲にしているようには見えないんですが、ニッポンが働きすぎなんですね。

プーさんの声は、昔TVで聴いた声に似ているような気がしました。
ビジュアルは、あのリンクに雨霰と投げ込まれるタイプと顔立ちも違うんですが、とても可愛らしい。
古き良き時代のロンドンや、郊外の風景がとても素敵。
原作のイラストも活かして、あのプーさんの世界観はまったく壊すことなく時代が流れていくところなど、さすがディズニー。



映画
by august22moon | 2018-10-07 23:00 | 映画 | Comments(0)