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カテゴリ:映画( 389 )

ドメ・カルコスキ監督作 『トールキン 旅のはじまり』

d0109373_2332736.jpgニコラス・ホルトの素顔が見たくてー


1900年代初頭のイギリスの、緑豊かな田舎の風景(ホビット庄を思わせる)や、仄暗い煉瓦と石畳のひんやりとした風景すらも美しく見えました。
壮大なファンタジーを創り出した伝説的作家の青の時代を描いて、微笑ましかったりその才能の片鱗に感嘆させたり。
往時のイギリス青年らしい半生です。

どうしても、「ホビットの冒険」や「指輪物語」の着想や源泉となるであろうエピソードを期待してしまうのですが、学生時代の友人たちとの出会いだけでなく、ソンムの戦いの場面も印象的に巧く表されていたと思います。
冥王の国を思わせたり火炎放射器の劫火が竜の吹く炎だったり黒の乗手が駆け抜けたりするのは、いかにもトールキンの心象風景。
塹壕熱に罹った上官トールキンの容態を支え時に暖を取らせ時に攻撃から庇いながら、探している友人の部隊の位置まで調べたりと無私の献身をする部下が、まるっきり「サム」ではありました。


気になったのがまだ幼い弟くんのことが、あまり描かれなかったこと。
お兄ちゃんですら、転入生として悪ふざけの的になったのに。弟くんはクラスで除け者になったりしなかったのかな。
キング・エドワード校に初登校の日の後ろ姿なんて不安そうで、気にかかってしまいました。
その後、部屋の場面でちょこっと出てくる程度。大人になって家庭もできた頃に現れたのが弟だと思いますが、俳優さんの風貌からは結構逞しく生きていたようではありましたけど。

ニコラス・ホルトは、頭脳は明晰で秀才なんだけれど繊細な青年がとてもお似合い。
心を許しあえる友人たちのなかで青春を謳歌しているようで、でもどこか寂しげな横顔も印象的でした。
戦死したジェフリーの母親に、彼の詩の出版化を勧める時の慈愛に満ちた表情はとても美しかったです。
母親役の女優さんの受けの演技も素晴らしかった。

このエピソードを最後にもってくることで、作品中の「仲間との絆」という要素については最も強く印象付けられた感じです。




映画
by august22moon | 2019-09-08 23:00 | 映画 | Comments(0)

山崎棄貴監督作 『アルキメデスの大戦』

d0109373_21253973.jpg予想以上に面白かったです。
原作は未読ですので、数学者が巨大戦艦建造を阻むことで開戦を回避しようと挑むということぐらいの情報でしたので、クライマックスの面白さがより味わえました。

冒頭に坊ノ岬沖の海戦が描かれるので、フィクションとはいえ、大和は造られそこで息の根を止められるのは史実のまま。
場面はすでに米軍の波状攻撃に、高角機銃で応戦するのみで、戦況は決定的。
さらに絶望的にさせるのが、墜落した戦闘機から脱出した兵士を飛行艇が悠々救出していくのを、兵士たちが唖然と見ている場面。これは巧いと思いました。元々の大差を突きつけられた瞬間。

大和がゆっくりとその巨躯を傾けていき、撃たないままの主砲がぐらぐらと揺れるのも衝撃的ですが、重油の黒煙がまるで噴火のようにもうもうと空高く上がるのも衝撃的でした。

かなり忠実に描かれたらしきこの「最期」に向けて、なぜ戦況を読み誤ったのか日本はなぜ大和に固執したのかが描かれました。

スカウトされたかたちの数学者・櫂としてみれば、山本五十六らの言葉から、大戦を回避できると信じて造船予算の不正を暴くんですが。
これがまるで池井戸作品。なんとか学園問題も連想させて。
さまざまな妨害を受けて、平山造船中将の予算案を崩すまでが緊迫感がありました。
特に、決定会議が始まったところにも計算しながら駆け込み、計算が終わるまでの時間を稼ぐ(10分!)ために、戦艦の建造費を割り出す公式を発見したとしてそれを証明してみせる間に計算を仕上げさせるという土壇場の攻防で平山を充分追い詰められたし。
思わず拍手しちゃう事務方同様に、遂にやった!ユリイカじゃないですかー!と見るものを高揚させるんですが、そこからのさらなる二転三転の展開もたいへん面白かったです。
戦争は会議室で起きているわけです。
しかし、ほんとうのどんでん返しがこの後で。

この会議から造船研究所みたいな施設での平山の発言は衝撃的でした。
これは、田中泯さんのチカラによるところ大で、無理矢理な軍人の理屈にも圧倒的な説得力がありました。
二千人以上の戦死者を出した悲劇的な、あの、「最後」ではなく、「最期」に繋がりました。
本当に強かだったのは山本五十六のほうで、平山のほうが誠実にみえてしまうという、恐ろしさ。

「日本人は負け方を知らない」。
あの重い言葉がなければ、ロケ場所のせいで「造船は続ける!戦争は止めない!」なんて過ったままになるところでしたわ。

結局は平和のためではなく軍事利用されたわけで、開戦へのうねりに巻き込まれ絡めとられていたのを気付いた時の、菅田さんの演技がなかなかよくて。
言葉が出ないのがよかった。
山本五十六の乗船を向かえる時の呪詛を含んだ目からは、戦時下のエンジニアの真情を考えさせられました。

なんだか、堀越二郎にまでね、思い馳せてしまいました。


菅田さん演じる櫂が公式を板書する場面を設けていて、頭の中にその式が浮かんでいるように見えましたし、型だけではない真実味が感じられました。
(料理人を演じる時の調理中の食材への視線のような)
数学の先生って、直線とか曲線がフリーハンドできれいに書けるじゃないですか。菅田さん、数字だけでなく線も、何百何千回と書いた手慣れた線に見えました。
早口で喋ると滑舌が気になるところもありましたが、そこは軍人ではなく学者さんっぽくて反ってよかったかも。

菅田さんもよかったんですが、相棒となる田中少将役の江本佑さんがとにかく巧かった。
会議中、遂に計算が終わったと立ち上がった時なんて、最高です。
彼は軍人だから、開戦不可避と気付いているだろうし、山本案を採用させるべくの行動だし。櫂の信じている未来と彼の想像している未来は違う。それらをもっての櫂への寄り添い方が絶妙。
きっと原作にもっと深く描かれている田中の背景や性格を表現しているんだろうと思わせました。



映画
by august22moon | 2019-08-31 23:00 | 映画 | Comments(0)

片淵須直監督作 『この世界の片隅に』NHK放映

d0109373_17275561.jpgだいぶ前に日本映画専門チャンネルだったかのCSで見たんですが、中抜けで。今回ようやく全編拝見。

これはとにかく原作が素晴らしいんでしょうね。
戦争の悲劇を描いた作品は数あれど、なぜこんなに注目を浴びたか。若いひとたちにも共鳴したのは、すず役の能年玲奈さんのキャラクターとあまりにぴったり嵌っていたことばかりではないでしょう。
テンポがとてもよくて、あちゃーとかあれぇとか反応するやいなやポンポン画面も時間も移っていく。
すずが不慣れな天秤棒で周囲のひとたちに当ててしまう場面は、別のアニメ作品になったかのよう。ド根性カエルみたいで爆笑場面にしています。
昏い筈の戦前から戦後の時代をコミカルに描写したのが、惹きつけたのかも。
それが後半の、この世界の片隅で慎ましく生きているなんの罪もない人々が等しく傷つけられた地獄を、より鮮烈にさせます。


姪とともに片腕まで奪われるという残酷な運命が衝撃的ですが、近所の家の軒先に行き倒れていた兵士が、広島から徒歩で逃げてきたその家の息子だったと後々分かるというエピソードがあまりに痛烈でした。
広島で出会った女の子の運命もあまりに辛いのですが、同じ右腕の記憶からその子が思わず抱きついてくるのは、すずに出会えてよかったと安堵させます。
見ず知らずの孤児に家族みんなが、奪われた晴美が戻ってきたように受け入れるのが、心の持ちようでしか立ち直れない哀しさを感じました。
とにかく風呂へと慌てる家族の中で、すずが「最後のほうがいいでしょう」と、相変わらずの大らかな口調で言うのがよかった。




映画
by august22moon | 2019-08-11 23:00 | 映画 | Comments(0)

ジョシュ・クーリー監督作『トイストーリー4』

d0109373_1653072.jpgこのシリーズで初めてスクリーンで見ました。
夏休み満喫中のお子たちで賑やかです。

字幕版は時間的に合わず吹替版でしたが、まあ、戸田恵子さんの巧いこと。
アニメの細かい動きに寸分違わずお見事な表現で、ボーに命を吹き込んでいます。

ボイスボックスをあげるというエピソードはしみじみといいお話ですが、ギャビーギャビーの当初の振る舞いとお付きの腹話術人形がホラーなんですけど、お子さまたちは大丈夫でしょうか。

意外な展開のラストは、好みが分かれるところでしょうが、長年その成長を見守ってきたご主人を失った喪失感がずっと心の底に在ったということなんでしょうか。
忠誠心を信条としてきたおもちゃが新しい「ストーリー」を自分で選んだというファンタジーらしいラストでした。
キャンピングカーのサイドオーニングに乗ってしまう場面では、そのまま仲間のところに戻っちゃうってことになるのかと思いきや、でしたけど。

「3」ほど衝撃的ではないけれど、楽しいおはなしでした。
とにかく表情や仕草が繊細で的確で、おもちゃたち活き活き。

こうゆうおはなしをみていると、誰もが子供のころに遊んだおもちゃや人形のことを思い出すんでしょうねぇ


映画
by august22moon | 2019-08-06 23:00 | 映画 | Comments(0)

ガイ・リッチー監督作 『アラジン』

d0109373_143449.jpgウィル・スミスのセリフ回しが聞きたかったんですが吹替版しか上映時間が合わなくて。
山寺さんはむろんかなりな実力者なんですけどね。
でもアラジン役の中村倫也さんが、歌をはじめセリフが巧くて、一語一文字に感情が込められて平坦なセリフ回しになっていませんでしたので、ストレスもなく最後まで楽しめました。
ジャスミンを送り届けたあと、魔法の絨毯に倒れこみながら「やった」と呟いた声は、いかにも中村倫也、という感じでした。
なんだか佐藤健さんの声にも似ているような。

やはりウィル・スミスのチカラが作品を楽しくしていて、アニメ版のことなど過りません。
あのロビン・ウイリアムズのマシンガントークは圧倒的な可笑しさがありましたが、軽快・軽妙さという点では現時点でウィル・スミスの右に出る俳優さんはいないでしょうね。
アラジンが街中を逃げ回る場面も面白かったですし、ジャスミンもきれいで。

帰り途で口ずさむ歌がある作品って楽しい。
♪ a whole new world ~


映画
by august22moon | 2019-07-30 23:00 | 映画 | Comments(0)

河瀬直美監督作 『Vision』 wowow放映

d0109373_215762.jpgだいぶ前に見たんですけどね

ちょっとよくわかんないままで

スピリチュアルなおはなしである場合、作家の言わんとするところのどこかひとつでも腑に落ちるところがあれば、自ずと全体が伝わってくると思うのですが。

ジュリエット・ビノシュの芝居じたい、あまり心情が伝わってきたことがないもんですから、いったいこの女性はほんとうに「vision」なんつー未知の植物を探しに来たのか。
遂に吉野の森に到着したという感慨すらも受け取れません。

一番の疑問と不満は、ジャンヌがなぜ智との関係性を変えてしまったのか。
旅人と山守という緊張感のある距離をなぜ壊したのか。
そこに至る心の変化が見えない。
それが森の神秘ということなんでしょうかね。それならばもっと幻想的に魅せてほしかった。

一旦帰国するっていうのも、この物語にどうゆう意味をもたらすのか理解できず。
アキという老女も、千年生きてるとかファンタジックなこと言ってる不思議な存在なようなんですが、それにしては活き活きとしてる。目が不自由なのかどうかはっきりせず。
後々、ジャンヌとは関りがあったのに、ジャンヌは初対面のように振舞う。

で、おはなし進んで、「vision」なる植物のことはまったく触れられなくなり・・・
なんのために遠路遥々?
それがメタファーだったとしても、どこかで彼女の真意を覗かせてくれればvisionどうなった?とならないんですけど。
千年というキーワードもなんだったのか。

りんという青年が現れてからは、まだ筋がでてきたんですけど。
最初のうち、ちょこちょこお世話しないとダメという場面があり。普通の生活ができないコなのかな?10歳?妖精?という不思議ちゃん。
でも、そんなところが、演じる岩田さんの透明感で、無理のない流れに感じました。
『植物図鑑』でのかなり非現実的な役柄も、不自然さが軽減されましたし。
薄く目を開いた時に涙が溜まっていたという表情は印象的でした。

あの時捨てた子供を探してっておはなしなら、まだすんなりしたかも。

冒頭に出てくる田中泯さん演じる猟師の緊迫した場面と、森山未来さんの鹿が撃たれて倒れる姿を彷彿とさせた倒れっぷりは見事でした。



映画
by august22moon | 2019-07-27 23:00 | 映画 | Comments(0)

ヤヌス・メッツ監督作『ボルグ/マッケンロー』wowow放映

d0109373_219128.jpgウィンブルドン開幕に合わせた放映。
制作国がスウェーデン、デンマーク、フィンランドということで、スウェーデン人がちゃんとスウェーデン語で喋るので、ルードヴィヒがイタリア語喋ってるけど仕方ないねって気分で見続けることがありませんでした。







実在の人物を描くのにやはり似ていることは重要だと思わせるほどボルグの再現がパーフェクト。
顔立ちは勿論のこと、猫背気味な背中、バックハンドの時の左肘の引き具合、トップスピンを打った後の体の開き具合・・・完コピです。
FILAのマークの有無を確認しないと分からない写真もあります。
d0109373_22365055.jpg





でもポケットからオガクズみたいな粉をグリップに付ける場面はなかったような。

シャイア・ラブーフはマッケンローの、どこか悲しそうなやり場のない苦しさが伝わってきて、彼の求めているものがなんだったのか気付かされるようです。
(いやしかしまさかシャイア・ラブーフがマッケンローを演じて違和感がないとは!)

恩田陸氏だったかの小説に、「シュテフィ・グラフは対戦相手ではなく自分と闘っている」という表現がありましたが、まさにボルグはこのタイプ。
マッケンローがミスジャッジにも抗議しなかったのは、自分とだけ闘っていた故なのではないかと感じました。


(キプリングの詩の前のふたり。壁にこの詩の一説を記すクラブのセンスったら)
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ボルグが、子供のころは荒っぽくてコーチが手を焼いたというのは知っていましたが、悪童呼ばわりされていたマッケンローは逆に親の期待に応えようとする優等生タイプだったというのが意外で面白い背景です。
ご本人たちは、フィクションとして距離を置いているようですが、若き日のボルグに似ているコを見つけてきたなぁと感心していたら、なんと実の息子さんだったとは。


あの頃は、wowowもなかったので中継のあるのは全英だけ。80年のウィンブルドン決勝は見ていたのですが、あまりに長くて途中寝てしまい、目が覚めてもまだ決まらずまた眠くなってを繰り返して、ようやく終わったーという記憶です。
息の詰まるような決勝の緊張感は、フィクションで再現しようとしても無理。製作側もそれは承知で、そこに重きは置いていませんでした。

寡黙で冷静な試合運びの印象とは裏腹に身内に向ける冷徹な態度は、試合中における沈着冷静さを保つためのようです。
五連覇を成し遂げなければ忘れられるという王者の苦悩をじっくり追っています。
達成しても尚、新たな決意が滲んだラストの昏い表情にもそれは感じられました。



映画
by august22moon | 2019-07-01 23:00 | 映画 | Comments(0)

クレイグ・ガレスピー監督作 『アイ,トーニャ』 wowow放映

d0109373_22495079.jpg事件当時は、スポ魂ドラマによく登場した敵対事件が実際に起こってしまった印象でした。
排除させて勝ってどこが嬉しいんだと。なにがそこまで彼女を追い詰めたのかと疑問ばかりが残りました。

主演のマーゴット・ロビーが製作も兼ねる今作の冒頭で、真実か否かは見る側に委ねると断りが出ているだけあって、トーニャ側の証言だけでストーリーは進んでいきます。
本人の証言はともかく、実行犯依頼者の証言で真実はどうなのかもう充分って感じです。
製作側が描きたかったのは、アスリートらしからぬ背景なのかな。

実年齢差以上にトーニャ本人はマーゴット・ロビーより若々しく、普通の女の子という風貌なので、まったく似ていないし似せてもいないので、ちょっとあの粗野な生活が実話に見えない。
それほど酷い環境すぎて唖然。
日本人選手で紹介されるのは、早朝練習に自ら運転して子供を送り迎えし、ダブルワークや少しでも賃金の高い力仕事までして高額になる練習費用を捻出するご両親の苦労ばかり。
家の中で練習環境を作り厳しく育てるかたもいますが、あくまで強くするため。
女性アスリートの全てが、純粋にスポーツだけに取り組んで、汗と涙の青春を送ったひとばかりではないでしょうけれど。

トーニャも練習は頑張ったんでしょうけれど、しかしブレードでタバコを踏み消すのは、論外。
真摯さがあったとしても、台無し。
唯一の救いは、コーチが彼女の才能を認めてきちんと育てようとしてくれていたこと。
バイト先にまで来て再起を呼び掛けて。決して見捨てなかった。

当時の芸術点という表現力に於いての差が、トーニャを悩ませるひとつに挙げられています。
なぜ採点が低いのか審判に詰め寄って返ってきた答えが「芸術点」。
「芸術といわれるスパイラル」のミッシェル・クアン選手。ドラマチックなアシュリー・ワグナー選手。女優の演技を見せられているような優美なネドベージェワ選手。
ジャンプも重要だけれどその技術だけでは評価されない。数少ないアーティストとしての技量も問われる競技。

それを受けて、ピンクの衣装にする単純なところが、彼女の理解の浅さでもある。
ふたりの差はそんな衣装にも表れていて、それがふたりをより対象的に見せています。
ナンシー・ケリガンはヴェラ・ウォンデザインの現代にも通じる洗練された衣装。
トーニャは重そうなほどラインストーンがふんだんに付いて今も時折ロシア辺りで見られる装飾過多ですが、それはまだ華奢な若い選手だから。
トーニャはそれを部屋で自分で縫い付けているところが、彼女の選手としての環境を表しています。

全体的にシニカルな仕上がりなんですが、肝心のリレハンメル五輪での登場前の場面は、印象的。
靴紐のトラブルはどんな状況だったのか。
現在のようにいろんな海外大会のようすが見られない時代でしたので、初めてふたりの氷上対決と期待していたのに、肝心の本番にあんなことになるとは。
奇妙な事件に相応しい、妙な結末。
マーゴット・ロビーはかなり訓練したようでスケーティングも頑張っているのですが、この時の焦るようすが巧かった。
初めて「トーニャ」に同情しました。
かつて、さまざまな挫折を乗り越えて復帰した女子テニス選手が、復帰劇を書こうとするジャーナリストに「出版するなら自分で書く。誰にも自分を語らせない。」と答えていて、それはいかに辛い闘いだったか分からせるに充分な言葉でしたけれど。

トーニャというひとはこうして自分を描かれることは、正当化されることと解釈して大歓迎だったのだろうなと感じる作品でした。

同じフィギュアでは、スルヤ・ボナリー選手もとても印象的でしたから、映像化されそう。



映画
by august22moon | 2019-06-21 23:00 | 映画 | Comments(0)

細田守監督作 『未来のミライ』wowow放映

d0109373_23153168.jpg谷尻氏設計の家が斜面を活かしたような階段が多い家でユニーク。
横移動だけでなく縦や奥に移動するので、それに伴う感情も広がります。
でも、玄関や下の部屋に行くのに雨の日は傘差すのかしら。庇か屋根あった?
一見不便そうなところもデザイン性重視の若さが感じられます。
子供が階段を何度も登ったり下りたりするのも暗示的。
(どんなに泣いてだだこねても開けた扉をちゃんと閉めるのが可愛い)

画がとにかく素晴らしくて。
子供の体形、動き、態勢、バイクも直線道路をちゃんと疾走してるし。
風景も美しい。

若い方たちには『サマーウォーズ』や『時をかける少女』のほうがウケるのでしょうが、命の繋がりを描いた今作は一番見応えがありました。
お人形さんみたいな脚とか、横顔で大きく口を開けた時にこちら側だけに描かれるのも、若いひと向けには軽やかで楽しいのでしょうけれど。

子供の成長の過程をファンタジーを交えて表されるんですが、家族の歴史は遡るほどに劇的になっていく。
特に、ひいおじいちゃんの若いころのエピソードは、あれだけでは勿体ない。
おしなべてひとの動作が滑らかで筋肉がちゃんと動いて体重も感じられるんですが、空襲で海に投げ出されそこから泳ぎだす場面は感動的ですらありました。
全てが失われた辛さ生き残ってしまった辛さから一転、生きようとする決意が漲った水をかく腕。
ひいおばあちゃんとの‘かけっこ’のおはなしも、それに至る場面を見せずに始まるのがいい。
様々な出来事が積み重なって至ったあの夕暮れ。いいおはなし。

役所さんの穏やかで好々爺な役柄は珍しいので、さりげない口調が楽しかったです。
くんちゃんの声を子役にしなかったのは、どうゆう意図なんでしょうね。
「おじゃまじゃくし」や「そーすけのとこ きたー」を避けたのか
メイちゃんが「やだー」と号泣するとこちらも泣けてきますが、子供の声ではないと、また怒っちゃったと悔やむママのほうへ同情しちゃいます。




映画
by august22moon | 2019-06-03 23:00 | 映画 | Comments(0)

テイラー・シェリダン監督作 『ウインド・リバー』wowow放映

d0109373_21422567.jpgネイティブの人びとが、現代のアメリカでいかに迫害されているかを突きつけるだけではなく、ミステリ仕立て。














地元警察も立ち入れない治外法権のような場所があることにまず驚き。
石油掘削所の警備員たちが、警官に銃を向けるって。
メキシカンスタンドオフですよ警官相手に。
野生動物対策なのかもしれませんが軍用ショットガンまで配備されてるとは。

希望もやりがいも見失って無気力になってゆく地元の青年たち。
娯楽も限られた辺境の地に派遣されて歪んで荒んでいく男たち。
雪に閉ざされて荒涼さは弥益ばかり。
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エリザベス・オルセン演じるFBI捜査官が、適任者を派遣することもできず、役に立たないなんて言っていながら、臆せず立ち向かっているのがよかったです。

極寒の地で移動する時はM1985はこうして抱えるのがセオリーなのね
d0109373_22355917.jpg




ジェレミー・レナー演じるコリーが、政府派遣のハンターとはいえ、危険な野生動物と向き合ってきていただけあって、肝が据わっている。
逃げた容疑者が飛び出してくるであろう裏口で、ゆったりと手にしたスコップで瞬殺。

カウボーイハットを被っているのも、先住民を迫害している白人たちと自分も同じ白人であることを忘れないためなのかな
走っていく犯人に向けた、聞き取れないほどのつぶやきは、まるで祈りのよう。
撃てるのに撃たない。この地に命を奪わせた犯人を同じこの地に奪わせる。
被害者女性の部屋で自分の娘が一緒に写っている写真をみつけて、ただ涙ぐむ。
その父親が死化粧を施していて、教えてくれる人がいないので自分で考えてやったというのも哀しい。
被害者家族はこうして耐え続けるしかないのか


怪我をして入院中のバナーを見舞ったコリーが持ってきたワニのぬいぐるみについて笑いあったり、傍らにあった雑誌を読んであげるとこがとてもよかった。
本じゃなくて、雑誌というところがいい。他愛ない記事で心を解して、少しでも気を紛らわせなければならないほど、辛すぎる悲劇でした。




映画
by august22moon | 2019-05-31 23:00 | 映画 | Comments(0)


出会った本、映画の感想。日々のこと。


by august22

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